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こらぼでほすと 桃色子猫2

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「まあなあ。とりあえず、マンションに一回帰って、俺も掃除してくるさ。」

 一応、社宅はあるので、そちらの掃除なんかはやらないといけない。それらの雑用をやって、四、五日はのんびりできる算段だ。その代わり、虎たちが、プラントへ出向いたら、ラボの管理で、あちらに住み込み態勢になる。桃色子猫が、エターナルに同乗するので、寺の女房のフォローが気になるところだ。

「あのさ、悟空。レイを、来週、こっちに呼びつけてもいいか? 」

 同じ部屋で寝てくれる相手が、しばらくは必要になる。普段は、子猫たちが帰ったら極力、間男のハイネがそうしているが、今回は無理なので、そう提案した。悟空は、寝相が悪くて、同じ部屋は危険だから、他の人間ということになる。

「俺も、それ言ってある。ダメなら、親父と寝てもらうけどな。」

「まあ、本来は、亭主が寝てやればいいんだけどさ。」

「さんぞーは、どっちかってーと、一人寝しないと寝られないらしいんだよ。野宿とかなら、別にいいらしいんだけどさ。」

「そんな細やかな神経が、おまえの親父にもあるのか? 」

「あるんじゃねぇーか? 」

 そんな会話をしていたら、件の坊主が風呂から上がって来た。すでに、食べ終わった悟空は、入れ替わりに風呂に向う。順番に入らないと、ラストが親猫だから遅くなるからだ。



「三蔵さん、あれ乗りたい。」

 桃色子猫が、二人乗りのウォータースライダーに乗りたいと誘えば、坊主もしょーがねーなーと立ち上がる。割合と、うちの亭主は子煩悩なのかもしれない、と、女房のほうは、タープの下で寝転びつつ考える。悟空にだって、なんだかんだと考えているし、悟空が言えば、あまり反対もしないのだ。

「そろそろ暑くなって来たな? ママニャン。」

「ちょうどいいだろ? 泳ぐにはさ。」

「おまえさん、泳がないのか? 」

 朝から少し桃色子猫と流れるプールで泳いでいたが、親猫は食事が済んだら、荷物番と化していて、のんびりと日よけタープの中で読書なんぞしている。

「もういいよ。おまえこそ、ナンパでもしてきたら、どーだ? 」

「ガキばっかで、いいのがいない。」

 ハイネも、ぶらぶらはしていたが、戻ってきて同じように転がっている。ウィークデーのプールとなると、夏休みの学生たちか、家族連れなんかが多くて、ハイネのストライクになりそうなのはいないらしい。

 プールの売店なんてのは高いだけで、おいしくもない、と、わかっていたから、食事もクーラーボックスで運んできた。大したものではないが、おにぎりとかチューリップとかの定番弁当だ。それらを、ばくばくと食べ終わると、年少組は、ウォータースライダーの攻略に取り掛かった。ここには、かなりの種類のスライダーがあって、なかなか楽しいらしい。フェルトも一緒にやっていたが、さすがに絶叫系は、ヤダと、逃げてきて三蔵と二人乗りに出かけたのだ。そろそろ時刻は、一番暑い時間帯だ。日陰で座っていても、汗が流れる。こら、まずいな、と、ハイネは何やら取り出して、タープの内側に設置している。それから、ポリエチレンのタンクに水を汲んできて接続した。

「スイッチオン。」

 と、陽気に叫んで、始動させると、小さな扇風機が廻って、そこから霧状の水が降ってくる。ミストシャワーと呼ばれる屋外型のクーラーである。

「涼しいな。」

「ふふん、用意しといて正解だったぜ。」

「けど、これ、本が濡れるぜ? ハイネ。」

 基本、水だから本はへなる。ニールの持っているペーパーバックは、少し重量を増した。

「読まないで、人間観察でもしてろ。」

「まあ、いいけどよ。しかし、よく考えたら、フェルトだけが女の子だったな。アイシャさんにでも頼めばよかった。」

 年少組が一緒に遊びに来たのだが、よくよく考えたら女性陣がいない。別荘では、カガリとラクスが一緒だったが、ここには、フェルトだけだ。更衣室とか、トイレとか、いろいろと一人で行かないといけなくなるので、親猫は気にした。

「俺も、うっかりしてた。」

 ハイネも、うっかりしていた。他の子猫たちは男だから、そんなことを気にしなくて良いからだ。そこへ、キラたちが戻って来た。どうやら、全制覇し終わったらしい。

「あのね、ママ。日曜日のことなんだけどね、お寺で流しそうめんをやりたいんだ。」

「ああ? 流しそうめん? 」

 そうめん自体はわかるのだが、流すの意味が、親猫にはわからない。月曜日の夜に、エターナルは出航する。その前日ということだから、フェルトの送り出しなんだろうとはわかるのだが。

「こちらの植物で竹というのがあるんですが、それは空洞なので、半分に割って、そこを水でそうめんを流して食べるというイベントです。夏らしいものを、フェルトにも体験させてあげたいと思いまして。」

 アスランが、流しそうめんの概要を説明する。ハイネも、それは知らなかったのか、へーと頷いている。

「それ、準備とかは? 」

「竹は、こちらで準備します。割ったり節を取り除いたりするので、食べるのは夕方になるんで、ついでに花火もやるつもりです。」

「じゃあ、そうめんの準備は、うちですればいいんだな? 」

「そうですね。他は、適当にデリバリーしようかと思ってるんで、副菜は結構です。」

 『吉祥富貴』のスタッフが、ほぼやってくるから、それだけの人数となると、寺で準備してもらうのは大変だ。だから、そういうことにした。

「せっかく夏だから、極東の夏らしいイベントをしようと思ったんだ。」

「ありがとな、キラ、アスラン。そういうことなら、よろしく頼むよ。」

 フェルトは宇宙生活が長くて、季節ごとのイベントなんてものとは無縁だから、そういうものを体験させてもらえるのは、親猫としてもありがたい。ティエリアの様子からして、しばらくは降りて来られなくなるのだろう。それなら、なおさら、楽しいことで盛りだくさんにしてやらないと、と、親猫としても考えている。





 二日して、フェルトとニールは、デートがてらに水族館へ出かけた。それから、土曜日は、悟空も一緒に、プラネタリウムだ。一週間なんて、あっという間に終わってしまうなあ、と、日曜の朝から味噌汁を作りつつ、ぼんやりする。

「ママ、疲れてるんじゃないですか? 」

 朝の手伝いをしていたレイが、声をかける。夏休みが終わるまで居候します、と、レイは、また住み着いている。客間が空いているので、シンとレイが居座る形だ。どうせ、自分が桃色子猫が組織に戻ったら落ち込むだろうからなんだろうと、親猫も受け入れた。

「いや、明日には帰るんだなーと思ったら、ちょっとな。」

「また降りて来ますよ。」

「そうなんだけどさ。」

 ごりごりと大根おろしをしているレイは、いつものように微笑んでいる。食器を並べていた悟空も苦笑する。

「寝坊したー。」

 フェルトが駆け込んできたので、話題は、そこで切り替わる。

「大丈夫だ、フェルト。おまえさんより寝坊しているのがいるからな。シンを叩き起こして来い。」

「はーい。」