東方無風伝 その5
「ふぁ……」と暢気に欠伸を吐く霊夢。
陽の当たる縁側に腰掛け、妖夢の出した茶を啜る霊夢と魔理沙。その隣に藍と橙の式神コンビ、反対側には西行寺。
目のやり場が他に見つからず、仕様が無いと言った感じで庭掃除をする妖夢と、それを手伝う風間の様子を目で追っている。
「退屈ねー」
平和過ぎて、つまらない。幽々子があの外来人で遊んでいるのは魔理沙から聞いていたが、だからと言って様子を見に来ても何か企んでいる様子は無いしで、白玉楼に春が蔓延していたのも、何時もの紫の気紛れだと言う事を幽々子から聞いた。
その紫は、昨夜は眠ってしまって確認は取れないけど、きっと宴会に来ていたのだろう。
「退屈ならば、手伝ってきたらどうかしら?」
「嫌よ。唯でさえ、神社だけで手一杯だっていうのに」
「サボってばかりで、仕事が積み重なってるんだよな」
幽々子の提案に文句を言うが、魔理沙は余計な茶々を入れる。
「良いのよ。私の神社は例年通り、此処と違って正常な冬が来たから落ち葉が少ないの」
白玉楼の冬はあまりにも突然だった。それ故に、あんなにまで美しかった桜は全て死に絶え、後に残るのは大量の桜の死骸。
私の神社の木々は、それは秋には紅く染まった葉を撒き散らした。だがそれらは、風に吹かれ何処かに飛ばされて、ゆっくりとだけど着実に数を減らしていった。
ところが、白玉楼ではそれがない。
この桜の地面が、また元の土の戻るまで、かなりの時間を要
するだろう。
「……あー、退屈ね」
「だったら、うちの橙と遊んでいかないか?」
なんだか散った桜が物悲しくて、誤魔化すようにこの平和に文句を言えば、女狐にそう言われた。
目を落として、女狐の言う猫を見れば、何か期待を込めたような目と合ってしまった。この子も暇を持て余しているのだろう。
だけども、それもまた面倒臭い。
「いいわよ、私は」
「退屈じゃなかったのか?」
「あー、忙しい。だらけるのに忙しい」
ごろんと寝転がって、身振りを現して言う。
今日も、私の周りの妖怪達は平和だ。きっと幻想郷は今日も平和だろう。



