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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 その5

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「おや?」

 ふと、桜を掃く手の動きを止めて空を見上げる。

「どうかしましたか?」

 そんな俺の様子を不思議に思ったのか、妖夢が呼び掛けてくる。俺が空を見上げているのに気付き、釣られて空を見る。

「曇っていますね。このまま雨が降らないといいのですが」

 空は曇りきっているが、その雲は少し薄いようで、雨が降らせそうな雲ではない。

「妖夢」

「はい」

「ちゃっちゃと終らせよう。これから冷えるぞ」

 そう言って、少しばかり慌てるように、少しばかり乱暴に箒を掃いた。

「えっと……どうしてですか?」

 妖夢の疑問は、何故冷え込みそうだと俺が思ったのか、と言うことだろう。
 そんなもの、空を見れば解る。

「直に雪が降ってくる。そうなれば、当然冷え込む。そうなる前に終らせよう」

「雪ですか? ……私には降らないように思えますが」

「いや、降る。妖夢、年長者の言葉は信用してみると面白いぞ」

 そう言えば、妖夢はむっとした表情になる。

「どうした?」

「私だって、これでも見た目以上の歳なんですよ。多分、風間さん以上」

「おやおや、そいつは本当かい」

「これでも、半分幽霊ですから、半分寿命がないんです。人間よりも長寿なんですよ」

「ほう、そうだったのか」

 などと言われても、それでも俺から見ればまだまだ子供だ。
 馬鹿みたいに長過ぎる年月を生きると、たかだか数十歳数百歳、いや数千歳だろうと子供にしか見えん。尤も、そこまで長く生きるようなやつなぞ、数少ない存在だがな。
 そんなことを言ったら、俺から見れば生物全てが子供のままだ。

「さぁ、ちゃっちゃとやってしまおうか」

「あ、はい」

 妖夢を促し、再度庭掃除を始める。
 白玉楼を見上げるように空を見れば、相も変わらずの曇り空。
 この空を見ると、この寒さ以外で漸く白玉楼に冬が訪れたのだと実感する。きっと冷たい雪が降れば、その感慨もより深いものになることだろう。
 目線を空から落としていけば、縁側に座る霊夢達の様子が見える。
 西行寺が空を見上げた。
 きっと向こうも、雪が降る事に気付いただろう。
作品名:東方無風伝 その5 作家名:国城 龍耶