東方無風伝 その5
庭掃除をしている風間が手を止めて、空を見上げた。
それに何か異変を感じたのか、妖夢が声をかけて、二人で仲良く話し始める様子がよく見えた。
二人が仲良く話している光景を見ても、何も面白くはない。別段、あの二人に割って入って御喋りをしたいとか、そういう気分でもなく、ただ暇を持て余していた。
私からすれば、風間はただの金づる。
彼に貸したお金は、何れ利息を付けて返してもらう。その為には、彼には生きていてもらわないとならない。
私は彼が生きる為に、この先も何かしらの手助けをするのだろうか。それが見返りに合わなくとも。
……いや、それはない。
あくまでも、彼はお金を貸し与えただけ。きっと私はこれからも彼に恩を売り、それをネタにより高額の利息を請求するだろう。
「……あら」
幽々子のそんな呟きが聞こえた気がした。
隣の座る亡霊を見れば、空を見上げていた。まるで呆けたお婆さんみたいだ。
「大変、雪が降るわ」
幽々子の呟き。不思議に思って空を見てみるが、確かに曇ってはいるが、その雲は薄い。雪が、とても雨でも降りそうではないように見える。
本当に呆けたか? と私自身かなり失礼なことを思っていたが、紫の式神が言った。
「本当だ……。橙、今のうちにもう帰ろうか?」
紫の式神は、私達人間とは桁外れに頭が良い。それでいて、獣の成り上がりでもあるから、鼻も耳も良い。彼女が言うのならばきっと本当なのだろう。
「そうか? 私には到底降りそうな空には見えないが。霊夢はどう思う?」
魔理沙が言った。
良かった、解らないのは私だけじゃなかったみたいだ。
「私にも、雪なんて降らないように思えるけど」
「いや、この天気は降るよ。でも、積もる程じゃなさそうだ」
彼女達は、もう人間じゃない。きっと人間では感じ取れない何かを感じ取っているのだろう。
そう言えば、つばめが低いところを飛んでいれば、雨が降る前兆だと言う話がある。きっとそれに通ずる、動物独特の勘があるのだろう。
「それでは、私達はもう帰るとするよ。幽々子殿、大変世話になった」
「なりましたっ」
式神コンビは幽々子にいくつかの別れの挨拶を述べて、背を向ける。
私もどうしようか、これを機会に帰ろうかしら。



