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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 その5

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 ざっざと、黙々と箒を動かしてれば、箒を握る手がひやりと濡れた。
 とうとう雪が降り始めてしまったようで、顔を上げれば、空から雪が舞い降りてきていた。

「妖夢、雪が降ってきた。そろそろ戻ろうか」

 そう声を掛ければ、妖夢は空を見上げた。本当に雪が降ってきた事に少しばかり驚いているようだ。
 それから、そうですねと俺の呼び掛けに同意して、箒を手に歩き出す。

「本当に降るとは……」

「言っただろう。年長者の言うことは信じてみることだと」

「……それでも、幽々子様や紫様の言う事は信用に欠けるものがありますけどね」

「あっはっは、全くだ」

 確かに、何を考えているんだか解らないあの二人の言う事なんざ、とても信用出来るものじゃない。年長者だから、と言う考えは改めた方が良さそうだな。
 西行寺達が居座る縁側へと向かってみれば、あの式神コンビがいなくなっていた。

「藍と橙は?」

「帰ったわよ。猫は水が苦手だから」

「そうかい」

 雪と言えども、結局は水と変わりなく、更に言えば雨と変わらない。水が苦手な猫、それに加えて式神。相乗効果で橙は水がかなり苦手なのだろう。

「三姉妹は?」

 そう言えば、朝っぱらに眠っていたのを見て以来、あの三人は見ていない。

「帰ったわよ。貴方達が稽古をしているくらいの時に」

 そいつはまた結構前なことで。結局、あの楽団の演奏を聞くことは出来なかったか。少しばかり残念。

「降ってきたわね」

「本当ね。まさか本当に降るとは思わなかったわ」

「だぜ。空の雲はあんなに薄いのに、不思議なもんだぜ」

 やっぱり西行寺が予測していたようで、雪が降り始めたことがどうにも疑問なような霊夢と魔理沙。妖夢と同じことを言っている事が微笑ましかった。

「何笑ってんのよ、気味悪いわね」

「何を!?」

 気味が悪いと言われると、やっぱりショックを受けるもので。

「お、私は見てなかったぜ。と言う訳で風間、もう一回」

「するか!」

 俺の顔は玩具じゃない。
 ……そんなに俺の笑顔って気持ち悪いのだろうか。いや、霊夢は悪ふざけで言ったと信じる。うん、そうしよう。

「綺麗ですね」

 妖夢の呟きに釣られ、再び空を見る。
 雪がひらひらと舞い落ちる光景は、まるで桜が散る光景を思い出させた。

「冬の桜ってわけか」

 ひらひらと舞い落ちる白い桜。桜はまだ死んでいなかったのだ。
作品名:東方無風伝 その5 作家名:国城 龍耶