アンジェラス
「で?どうする気だ。」
「この場所に行ってみようと思う。もしかしたら生きてるかもしれない。」
「この子がか。」
「これはほぼ一ヶ月前に撮ったものだ。写真を写したわけじゃなければ可能性はある。」
「何故お前を呼び寄せようとするんだろう。」
「本物で調べたいんじゃないか…。結果が得られないのはクローンだからとでも思ってるんだろう。」
実際には成長した子がいないからなんとも言えない。解明するのとNTが増えるかもしれない事をはかりにかけてリスクが少ないほうをとったんだろう。
「そうか…。ではカイに渡りをつけて調べてもらおう。」
「カイに渡りをつけるってことはセイラさんに知られるって言う事か…。」
「それは諦めろ。お前がうろうろしていたら余計なものがついて歩くだけだ。まあめくらましにはなるが。」
「余計なものか…。」
相変わらず見張られてるから。特に地上では。危険分子に変わりはないか…。
「お前が動き回ってくれたほうがこっちが動きやすいかもしれん。」
「おれに何をやれと?」
「それよりカイに渡りをつけてくれ。おれはおれで休暇願いを出す。」
「許可出るのか?」
「家族に別れを言うぐらいの時間は取らせてくれるだろう。あ・お前も出しとけよ。」
「おれも?もう直ぐ上がんなきゃいけないのに?」
「休暇も取らずに動く気だったのか?」
「近いから大丈夫かなと。」
「そろそろ煩くなるぞ。」
「面倒くさい…。」
「それに上に行ったらほとんど帰ってこれなくなるから整理しておくことないのか?」
「持っていくものぐらいかな。ほとんど物置いて無いしペットも飼って無い。」
「GFは?」
「最近が特にいない。ってそんな心配までするのか?」
「出航間際にもめられると困るからな。」大変だねぇ管理職は。
「お前も部下が増えるとわかるぞ。」
「おれにその手の相談するやつは居ないと思う。あんまりされたことないし。」
何も言わずに納得してるようだ…。その反応もどうだろう。
「とにかくとれ。いざとなったら用事はこっちで考えてやる。一人で動くなよ。」
釘を刺されてしまった。そう言えば荷造りしなきゃいけないんだっけ。
カラバに来てからは移動ばかりであまり物持たなかったから簡単だな。
問題は作りかけのハロ。作っては人にあげてる。ここでも作ろうと思って持ってきてある。
上がる前に作ればいいか。宿舎に戻って暇つぶしに手をつける。誰が貰ってくれるかな。色どうしよう。
誰にあげようかと考えるのは楽しい。今は思いつかないけど。何かを作ってると雑念が消えるから好きだ。そうすると眠れる…。
言われたように休暇届を出してさしてない荷物の整理や雑用を片付けてると面会だと言われる。
面会?誰だろう。面会室に行くと懐かしい顔が待っていた。
「フラウ。久しぶり。子供たちも連れてきたのかい。」
「お久しぶり。アムロ。この子だけ連れてきたのよ。」
よく見ると後ろに子供が隠れてる。しゃがみこんで視線を合わせる。
「こんにちは。」思い切り隠れられてしまった。
「ほら、挨拶は?」子供の肩に手を乗せて前に回す。目が合うとまた逃げられた。
「嫌われたかな?」無理強いすると泣き出されるかなと思っていると
「ちゃんと挨拶なさい。」と前に押し出す。母親の顔を見てからチラッとこっちを見
「こんにちは。」と言ってまた隠れてしまった。
「人見知り?」
「そうなの。特に男の人が苦手で。」
「とにかく座って。なに飲む?オレンジジュースで良い?」
こっくり頷く。席を取ってから飲み物を持ってゆく。
「はい。」
「ありがと。」
「急にどうしたのさ。」
「なに?迷惑だった?」
「そんな事無いに決まってるだろ。遠いのに良くこられたなと思ったんだよ。」
「セイラさんに聞いたの。上に上がったら多分もう降りてこられないって。文句言うなら今の内よって。」
「で、文句言いにきたの?」
「会いに来てくれないから。」
「忙しかったんだよ。会いに行くと迷惑かけるし…。」
「迷惑だなんて。」声を落とす。
「余計なもの付いて来るんだよ…。それに合わす顔が無いし…。」溜息ついて
「悪い癖よ。何もかも自分の所為だと思うのは。」そう言われても…。
「それで何時までいられるんだ。」
「十日ぐらい都合つけて来てと言われてるの。」
眼をじつと見て何なのと訴えてる。肩をすくめて
「おれも聞いてない。」疑わしそうに見てから
「ま、いいわ。何か手伝うことある?」
「いや。荷物はほとんど無い。それより丁度ハロを作ってるんで良かったら貰ってくれないか。」
「喜んで。」
「何色が好き。」と飲み終わってストローで氷をつついてる子供に聞いてみる。また母親の影に隠れようとする。
「嫌われたかな…。」泣き出されないだけましか…。ふと見るとそのまま寄りかかって寝てる。起こそうとするのを止めて
「疲れたんだろ。送っていくよ。背負おうか?」
「ありがとう。お願いするわ。」
車を借りて乗せていくとホテルでセイラさんに合う。…そんなことじゃないかとは思ったんだけど。
「食事は?」
「時間内に帰りたいので今日は遠慮します。」
「そう?明日付き合ってくれるんでしょう。」
「…何時に来ればいいですか。」
「9時に。買い物して食事してドライブなんてどう?」
「分かりました。では明日。」
別れ際にそっとデータを渡される。早いな。後で見るとして明日買い物かぁ。ついでに色を決めてもらおう。塗装は早めに終わらせときたい。
部屋に戻ってハロを持って整備に置いてある工具箱を使いに行こうとすると途中でブライトに捕まる。
「引越し準備は終わったか?」
「大体。今作ってるハロを仕上げてフラウにあげるだけ。」
「…食事は。」
「えーと。」
面倒だから後で良いかと思ってたんだけど。
有無も言わさず引っ張られ食べ終わるまで動くなよと言い自分はコーヒー。
「見張らなくてもいいじゃん…。」
「言うな。おれの方が情けない。」
「ご飯食べさせるのに待ってたのか?」
「いや。明後日ミライが子供たちを連れて来るんだが…。」
「早いね。」流石だ。
「お前の母親を連れて来るそうだ。」
「は?」今聞きなれない単語が…。正確には聞きたく無い単語だな。
「もう一度言うか?」
「何でそんな話になるんだよ。」
「そんなに会いたく無いのか?」
「そうだよ。向こうだってそう思ってるって。」
「お母さんは会いたいと言っている。」ムッとしてしまう。
「食べ物は残すなよ。」
「分かったよ。」もそもそ食べる。
砂食べてるみたいだ…。母親のことなんかすっかり頭から抜けてる。今更会う気はなかった。残りも無理やり流し込んで部屋に戻る前にブライトにデータを押し付けて
「おれ今見る気にならない。」部屋で見るのは危ないかもしれないし。
「わかった。明日返す。」
「明日。セイラさんに買い物付き合えって言われてるんだけど。」
「そうか。」当然他がメインだな。分かりきってるが予想外の事も言われそうだ…。
「何時に出るんだ。」
「9時までに行くことになってるから8時半には出るよ。」
「では明日朝食の時に。」
「朝ごはん食べろってこと?」
「食べていかなかったら向こうで詰め込まれるぞ。」
「…8時までに行くよ。じゃ。」