The first quarrel
目が覚めると、自分が座っている床がコンクリートだということに気づいた。全体的に薄暗いし、此処は何処だろう。
「これで折原臨也を呼び出せっかな」
「どうだろうなー。こいつもただの《駒》でしかないんじゃね?」
寝起きのはっきりとしない脳で聞き取ったその言葉に愕然とする。
呼び出す!?そんな……困る!
言葉よりも先に行動に出ていて、電話しようとした奴に掴み掛かろうとしたら思い切り殴られた。ぐら、身体が重力に逆らえず横向きに倒れる。
「折原臨也さん?貴方のたーいせつな、男子高校生……殺しちゃいますよ?えーと、名前はなんだっけなぁ。竜ヶ峰帝人くん、だっけ?」
ニヤリと笑いながら意地悪く電話越しに喋る男。どうせ電話したって臨也さんは助けに来ない。無駄だ。
倒れ込んだ僕に男達は腹や足や腕など、蹴る。殴られた顔が未だ熱い。もういいや。どうしようも出来ない。起き上がる気力もないし、――
そこで僕の意識は途絶えた。
あれは…帝人……?
仕事の途中で、帝人らしき人物――いや、あれは帝人だ。見間違えるはずがない。
帝人と、いかにも関係がなさそうな男三人が一緒にいた。
そろそろ暗くなる時間だ。学校は終わっているはずだから、大方臨也のところでも行っていたのだろう。……それにしてもおかしい。臨也はかなり帝人を溺愛していて、凄く大切にしている。正直信じられないほど、だ。その臨也が帝人をこんな時間に一人で帰すなんてありえない。
けれど、帝人は用がなければ直ぐさま帰るだろう。この時間まで一人でいることはおかしい。
まさか。臨也……!
慌てて帝人を追い掛ける。臨也のことだ、もしかしたらこれさえも企みかもしれない。私には、彼のことを全くといっていいほど理解出来ないのだから。
追い掛けていたら建物へ入った。どこかの使われてない、寂れた倉庫のようだ。まずい、これは……
慌てて中に入る。中にいる男達の中心に帝人がいた。ぼろぼろで、どうやら帝人には意識がないようだ。
仕方ない。少し乱暴な手段になるが帝人をこちらに渡して貰おう。
影で帝人を包み、バイクの後ろに乗せた。そして全速力で私の住むマンションへ向かう。
どうやら追い掛けてくる気はないらしい。
作品名:The first quarrel 作家名:普(あまね)