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謎野うさぎ
謎野うさぎ
novelistID. 25775
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俺の家族を紹介・・・すんのか!?

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 たちすくむ相棒を強引にバーの隅っこ、外からは顔の見えない二人用のボックス席へ押しこんで、虎徹はじっと相手を眺めた。
「この後は用があるから、つったよな?」
「・・・。」
 相手は黙ったまま答えない。言い訳でした、と認めているようなものだろう。
 頑なな相棒に、どう対応すればいいのか迷う。だが腹の探り合いみたいのは苦手だし、そもそも好きじゃない。
「お前、何で俺を避けてんだ。」
 いきおい直球になった問いに、相手はやや逡巡した後、キッと虎徹を睨んできた。
「もういいかげん、潮時だと思いませんか。」
「は?」
「プライベートで会うのは、もう止めましょう。」
「・・・はぁ?」
 意味が分からない。しかもギチギチの敬語だ。最近では大分崩れてきたクール仮面をびっちり装着されたことも非常に腹立たしい。
 態度や表情から、そんな剣呑な気分はばっちり伝わったらしい。相手は冷静な表情のまま、いなすようにフッとため息をついた。
「見ましたよ。可愛い娘さんじゃないですか。」
「なっ!?」
 手慰みに持っていたグラスを危うく割りそうになった。ちょっとした秘密が、何時の間にかバレているではないか!タラリ、と背中に汗を感じた。
 小さい頃に家族を無くしたからか、相棒はことのほか家庭の絆を重く見るフシがあった。なのでたまたま言う機会が無かった事実を、寝た後は意図的に隠したのは事実だ。何より『バーナビーのファンなの!』とキラキラする楓を思い出すと複雑な父心にかられ、相棒の前で娘には触れたくなかったのが正直なところだ。
「男とデキてる、なんて知られたら困るんじゃないですか。」
 だが続く自虐的な台詞に思わず言葉を失う。
 100年前ならともかく、男性同士のペアも昨今は珍しくない。身近な仕事仲間にも、ガタイの良い友人のケツを常に撫でていくオネエ様(?)がいるくらいだし、虎徹に偏見はなかった。
 だが子供は純粋で残酷だ。そんな俺が育てたから楓は絶対に大丈夫、とは言い切れない。そもそも男親からしてみれば、女の子は永遠の神秘なのだ。自分が女性と付き合っても、良い顔はされないかもしれない。ましてや、相手は男。
 拒絶は十分にあり得る話だ───それでも、譲れないと思った。
「ヤだね。」
 虎徹は視線を逸らし続ける相手をギリッと睨み、吐き捨てる。
「冷静になって下さい。」
「娘のことはおいといて、お前はどうなんだ。もう俺と寝んのは嫌なのか?」
「!?」
 と、仮面がはがれ落ちた。動揺を露にした相手の隙を見逃さず、虎徹はテーブル越しにぐっと顔を近付ける。
「どうなんだ。」
「・・・貴方を、信用できません。」
「何っ!?」
 苦しそうにそう言われて、フイ、とソッポを向かれた。今までの冷静さが嘘のようにどこか痛々しい風情に、怒りとは別の何かがぐっとこみ上げる。
「オイ、俺を見ろ・・・こっち向けって!」
「!?」
 顔に手を添えて強引にこちらを向かせれば、眼鏡の向こうで青い目が揺れる。
「何を考えてる、バニー。」
「全部、嘘だったら、と・・・どうしていいのか分からない。」
 居心地が悪そうに視線があちこち彷徨った後、嗚咽のように小さく零れた返事。
 次の瞬間にはハッと我に返って、払いのけた虎徹の左手をチラリと見た相手に、ようやくその誤解が分かった気がした。
「嘘はついてねえって。娘はいるけど、嫁さんはもういねえよ。」
「じゃあ、どうして黙っていたんですか。」
「う・・・。」
 そこにはあまり触れたくなかった。父親のかわいらしいプライドだ。
 だが目の前にはそれなりに傷ついたウサギがいた。助けないわけにはいかない。だって手を出す前からずっと───虎徹はこのウサギを助けたくて仕方なかったのだ。
 しばしぐるぐると考えて虎徹はガタン!と席を立った。
「あーもう、酒はいいっ!お前んち行こうお前んち。そこで話すから。」
「は?」
 寝物語になら笑って話せるかもしれない。要は嫌なことの先送りだが、多分ベッドなら自分も相手もいくらか素直になれるはずだ。そう思いたい。
 ここのバーは、相棒のマンションまでほぼ人通りのない道だけで行ける。店を出た後も逃げられないよう腕をつかんで引きずっていくと、ようやく自分を取り戻したらしき男が抵抗しはじめる。
「な、何を勝手に!俺はまだ納得してっ、」
「・・・黙っていて悪かった。」
 が、耳元で小さくささやけば、たちまち暴れん坊の相棒は大人しくなった。