永遠にうしなわれしもの 第一章
「な・・何???」
眉を吊り上げ、濃紺の瞳を怒りにたぎらせながら、
今にも食ってかかりそうな勢いでシエルが問い詰める。
「心配せずとも、ちゃんと女性の血ですよ。」
すました顔でセバスチャンが答える。
「性別の問題じゃない!!一体 だ・・誰の・・」
「この血の所有者の名前を聞いたところでどうするというのですか?
ご心配には及びません。
坊ちゃんがご存知あげない方のものです。」
目を心持ち薄めて、微笑交じりにセバスチャンはそう答えると、
ひざまずいて飲み物を差し出す。
「ふざけるな!!誰がそんなものを・・・」
シエルは一喝して首を振る。
「大声を出されると、それだけ喉の渇きが酷くなりますよ。
坊ちゃんの健康管理は執事の役目。
まだ悪魔になられて間もないうちは、
喉の渇きや飢えを満たされないと、
衰弱してしまいます。」
確かに喉の渇きは刻一刻と増し、唾を飲み込むのさえ痛いほどではあったが、
シエルにとっては人間の血というだけで、もう飲む気も起きない。
「もういい、下げろ。」
「ですが・・・」
「要らないと言ってるだろ!!」
しばらくして、セバスチャンは
「承知しました。」
と一礼して、くるりと踵を返し、回廊に消えていく。
作品名:永遠にうしなわれしもの 第一章 作家名:くろ