永遠にうしなわれしもの 第一章
力いっぱい怒鳴ったせいで、
言われたとおり、さらに喉が焼けつくように痛い。
シエルはあまりの痛みに、グリフォンの彫像の嘴から流れ出る噴水の水に口をつけるが、
空気が流れ込んだかのように、逆に喉の渇きを悪くするばかりだった。
後ろからクスクスと忍び笑う声が聞こえて、振り向くとセバスチャンがすぐ後ろに立っている。
「ですから、そんなものでは渇きはおさまりませんと申し上げましたのに。」
「うるさい!!」
ぎらりと睨んだ瞳は燃え盛る炎のような悪魔の眼に変貌し、
その瞬間シエルは自分でも気づかない間に、
恐ろしい速さで地面を蹴って飛び上がり、
セバスチャンを押し倒して、喉笛に噛み付いていた。
苦痛に顔をゆがめるセバスチャンの白い首から一筋、二筋と赤い血の道ができ、やがて大地に滴り落ちていく。
「坊ちゃん、はしたない真似はお止しください。」
その甘美な味を堪能していたシエルだったが、セバスチャンの呼びかけでふと我に返った。
「なんで避けなかった?お前なら、できただろうに」
セバスチャンの腕を押さえつけていた手を放し、
口端にべったり付いた血を手と袖で拭いながらシエルがたずねる。
それには答えずセバスチャンは諭すように、静かに言った。
「悪魔の血では、ほんの一時しか渇きを癒せませんよ。
やはり人間の血をお飲みになりませんと。
もはや闇に住まう一族になられたのですから。」
作品名:永遠にうしなわれしもの 第一章 作家名:くろ