永遠にうしなわれしもの 第一章
セバスチャンは、優雅な手つきで、
すっと手袋を引き抜いた。
青白い顔の横に手を掲げて、その左手の甲に濃く刻み込まれた契約印を示す。
「ええ。
その命令にイエスと答えた以上、
魂を食らえなくても
私は・・・」
そしてそのときふっとセバスチャンの、その紅茶色の瞳は、紅蓮に燃えさかる悪魔の眼に妖しく変貌する。
「あくまで、悪魔の執事ですから・・・」
・・今まで僕がずっと忌み嫌いつつ、絶大な信頼を置いていたその眼差し。
今の僕には、それは同族の証。
互いに警戒感をもたらすそれを、
また同時に心のどこかで美しいとさえ思ってしまう・・
だが、ほんの瞬間でそれはまた紅茶色の甘く翳った瞳に変わっているのだ。
聞きたかった返事を聞いて、シエルは満足したのか、またもとの沈黙へと戻っていく。
作品名:永遠にうしなわれしもの 第一章 作家名:くろ