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永遠にうしなわれしもの 第一章

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 馬車にシエルを乗せたセバスチャンは、
 軽い身のこなしで、ふわりと飛び御者席につき、馬に一鞭入れる。


 天鵞絨張りの席に一人で座るシエルは、
 緊張が解け、途端に眠気が襲ってくるのを感じた。
 本来悪魔に睡眠は必要のないものとセバスチャンはいつか言っていたが、
 きっとまだ身体が悪魔に順応していないのだろう・・
 いつしかシエルは黒檀の香りに包まれて、
 甘く心地よい眠りに誘われていた。


 深い湖の底から浮かび上がってくるように、
 徐々に意識がはっきりしてくると、
 自分がベッドに横たわってるのが分かった。

 
 薄っすら眼を開けると、
 蝋燭の明りが揺らいでいるのが目に映る。

 「お目覚めになりましたか?」
 燭台を片手に、セバスチャンが寝台の傍らに立っている。

 「ここは?」
 寝具をはいで、ベッドに座ると、
 セバスチャンは燭台をサイドテーブルに置いた。
 
 「長らく私の使っていた場所でございます。お着替えになられますか?」
 
 「ああ。」

 丁寧に折りたたまれた服を広げて、
 手際よく着せていく。
 最後に眼帯に手を伸ばしたセバスチャンに

 「それはいい。どうせここには僕とお前だけだ。」
 とシエルの声が響く。