永遠に失われしもの 第二章
全ての食器を下げ終わったセバスチャンが、
食後の紅茶を運んでくる。
「何の因縁もない人間では嫌だというのなら、
世の誰もが悪人とみとめる人間の魂を抜き取り、
血を吸えば、せめて気が楽になるのではないですか?」
セバスチャンは紅茶を注ぎながら、話しかける。
「僕は別に、正義の味方をしたいわけじゃない。」
「人間なら誰でも嫌だと?」
「・・・・・」
シエルは顎の下で手を組み、唇をかみ締めた。
「では、何だというのです?
貴方は現に、私の血しかお飲みにはならない。
それとも今後は一切飲まず食わずで、
お過ごしになられるつもりですか?」
「別に・・それでもいいだろう?」
ダイニングテーブルに肘をつき、上目でセバスチャンを睨むシエル。
「衰弱したものが支配者の地位を保てるとでも?」
セバスチャンは、悪魔の細い虹彩をより狭めて、狡猾な笑いをもらす。
反射的にシエルの目も、悪魔の瞳に変貌した。
「独りで立てないものが生き延びれるほど、世界は甘くはないですよ。」
「契約を忘れたか!?お前は永遠に僕の執事だ!」
シエルの右目の契約印が青白く光る。
セバスチャンの悪魔の眼は、陰の差した赤い目に戻り、冷酷な表情をして続ける。
「ええ。私は貴方の執事。
私が一方的に用意した杯では、お気が進まぬというなら、
喉が渇いたときは、呼び鈴でお申し付けください。」
-悪魔が代償のない契約を履行するとでも??坊ちゃん-
「それともいきなり襲わないと興がそがれるというのなら、話は別ですが・・・」
作品名:永遠に失われしもの 第二章 作家名:くろ