永遠に失われしもの 第二章
シエルは、ダイニングから一番近い娯楽室のドアを開いた。
大理石の床に、ペルシャ絨毯がひかれ、
中央にはビリヤード台、奥まったところにポーカーテーブルや、
ゆったりとくつろげそうな肘掛椅子が置いてあった。
ビリヤード台の羅紗は、張ったばかりで、コーナーポストを見ても、傷一つない。
今まで使われたことがないのは、見て明らかだった。
おそらく自分のために用意されたものなのだろうと、シエルは気づいた。
壁にかけられたキューの中から、一番しっくりするものを選ぶ。
ボールを定位置において、クラッシュすると、ボールがありえない動きをするのに気がつく。
・・・何だ??これは。・・
まるで羅紗盤がおそろしく歪んでるかのように、
まっすぐ進むはずのボールも所どころでおかしな重力を受けて、
まったく予想のできない位置に収まる。
しかもその歪み方は、手玉を打つたびに変わるのだ。
そしてどんなときでも、ナインボールは最も狙い難い位置にあるのだ。
シエルは仕方なく、1番から順に狙うことにするが、それとて限りなく難しい。
玉の軌道がまったく読めないのだから。
かといって、全くのランダムというわけでもなさそうだった。
何かの法則で動いているらしいのだが、どうしてもそれがわからない。
しばらく格闘してはみたが、まさにお手上げだった。
・・まぁいい。時間はいくらでもある・・
かなり長いことプレイしていたはずなのに、セバスチャンが戻った気配はなかった。
作品名:永遠に失われしもの 第二章 作家名:くろ