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ネウロ関係ショートショートショート

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 あはははと笑った彼はしかし次の瞬間には自分が何を笑ったのか忘れてしまっていた。彼は、首を傾けてきょとんとする。その動作の間に、
 ここはどこでじぶんはだれでいまなにをしていたんだっけ?
 というような文章が頭の中を通り過ぎた。
「なんだかこんなことを何回も繰り返しているような気がするなぁ」
 彼はぺたぺたと素足で歩き出した。薄暗い場所だった。壁に触れてみる。冷たい。手が赤く汚れたので壁から離れた。
「サイ」
 そう呼びかけられて振り返ったのは「サイ」というのが自分の名前だとかそんなことを思考する以前の身体的な反射行動だった。だから彼に呼びかけたその人の顔を見てから彼が自分の体の動きに疑問を持つことは無理のないことだった。
 でも、その人の名前はわかる。
「アイ」
「……どうかしましたか」
「んーと、お腹が空いたかな」
「そうですか」
 動きの少ない表情を彼はじいっと見つめる。するとどうやら前回の食事からそんなに時間が経っていないらしいことが読み取れた。
「ええと、」
 謝ろうと思って彼は言葉を探した。
「ぼくは、わたしは、おれは、」
「何をご用意致しましょう?」
 彼女は彼の言葉を遮った。彼はびっくりしたけれど、しっかり答えた。
「甘いもの。美味しいもの。ふわふわしたもの」
「それでは、ショートケーキにしましょうか」
 彼の目にはほんの一瞬だけ彼女が笑ったように見えたけれど、気のせいだったかもしれないと思った。
 或いは、願望だったのかもしれない。