永遠に失われしもの 第三章
シエルがまた深い眠りにつくと、セバスチャンは、
シエルの柔らかく光沢に満ちた絹のような青い髪をそっと撫でる。
肌の色は普段よりも、蒼白で、
まるで死んでしまったかのようだ。
--悪魔に堕ちても、悪魔であることに抗うぼっちゃん。
たとえ闇と狂気が貴方を支配して、
この身を刃で貫き、
破滅させたとしても、
それでも私はその最後のひとときまで、
誠心誠意を尽くして、貴方を守り、
どこまでもお供しましょう。
代償の無い契約--
私が得た永遠の呪縛は、
私が永遠にあなたのものであり、
そして私は永遠に、
貴方の魂を得られないという事実
この永遠の絶望が、私を悪魔の本性、
闇へといざなう。
いつか私の刃が貴方を砕き、
粉々にしてしまわなうことのないように、
この苦痛を一時の快楽で紛らわせる。
価値を見出せない数多の魂など、
あの高貴な魂に比べれば、
あまりにも矮小な悦びしかもたらさないが、
それでも、つかの間の鎮痛薬として--
寝台の脇に置いた椅子から立ち上がり、
黙礼して、セバスチャンは寝室を出た。
作品名:永遠に失われしもの 第三章 作家名:くろ