永遠に失われしもの 第三章
「うそおおおおおお」
甲高い絶叫が、あたりに木霊して、真紅のコートが揺れる。
「しーーーーー。
大きな声出さないでくださいよ。
先輩!!!
サボってるのバレちゃいますから!!」
慌てた様子で、ロナルドは金色の髪をかき上げた。
「ちょっとあんた!!」
グレル・サトクリフは赤い髪を振り乱して、ロナルドに詰め寄る。
「どーゆーーことなのよ!!
もういっぺん、ちゃんと説明しなさいよ!」
と言いながら、黒皮手袋でつつまれたグレルの手で、ロナウドはネクタイをつかまれ、
首を絞められている。
「く・く・苦しいですって!
離してくれないと、話せませんよぉぉ。」
やっと締め上げる手を離したグレルに、ロナルドが言った。
「だから、セバスちゃんが言ったんですって、扶養家族がいるとかなんとか。」
ロナルドは息を切らしながら、黒いネクタイを直す。
「だ・か・らぁ~~。それは誰なのよ!!
ってかセバスちゃん、結婚したの?
ってかしてたの?
そもそも悪魔って結婚とかするもんなわけ!??」
またグレルは、ロナルドのネクタイをつかみ、前後に強く揺さぶった。
「知りませんよぉ~~~」
「あーもううう。
肝心なこと、セバスちゃんに全然聞いてくれてないじゃないぃぃ。
あーーーもういい!
この私が直にセバスちゃんに聞いてみるから!
まったく髪が乱れちゃったじゃない!」
と言ってグレルは赤く長い髪をとかしはじめる。
「そりゃ、コッチの台詞ですって。」
ロナルドは呆れながらも、乱れた襟元とネクタイをまた直し始めた。
「で、いつなのよ。」
緑色の悪戯っぽい眼をして、グレルはロナウドに尋ねる。
「んと、多分あと30分ほどしたら、行かなきゃ・・」
「ちょっとあんた私に代わりなさいよ。
だいたいなんでセバスチャンの関わる案件で、私が外されてるわけ!?」
「そのうちサトクリフ先輩にも召集かかると思いますよ。」
「1日も待ってらんないわよ・・幸いウィルは出張中だし。」
と言ってグレルはロナルドに擦り寄る。
「あーーわかりましたって。
じゃ先輩ちゃんとうまくやってくださいよ。
あとでバレたら洒落になんねーし」
「おっけ~!ちょっと化粧直してこなきゃ。」
浮かれながら去っていくグレルの後ろ姿を見つめながら、
ロナルドは、にんまり笑ってつぶやいた。
「ラッキ~。
あんなハードな案件、やってらんないっしょ。」
作品名:永遠に失われしもの 第三章 作家名:くろ