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黒禍転じて悪夢と成す___テスト投稿

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・・・なんだ、アレは。
 松永の身体の上に黒い影のようなモノが覆い被さっていた。よく見れば人の形をしている。
・・・髪の長い、女か。
シルエットだけなのでよく分からないが、それは女性のようだった。

「_____そこで、なにやってんだ?」

そう問われてソレは顔らしき部分をあげてこちらを見た。目も鼻も無いのっぺらぼうだ。

『_____見て分からぬか』

驚いたことにソレは口を利いた。耳に心地よい声をしている。ソレが歌うことを知っているかは分からないが、もし歌えば大勢の人間を引きつけてやまないだろう。

「_____わからん。人に覆い被さってお前、何してる」
『最近この男は、わらわの存在を忘れておったようなので、思い出させてやっていたところじゃ』
「忘れさせといてやれよ。お前がなんなのか知らんけど」
『何を馬鹿なことを言う。この男がわらわの存在を忘れてしまえば、わらわは消えてしまう』

 消えとうない、とソレは言った。自分はまだこの世に存在していたいのだと。昔はたくさんの人間が自分を知り、恐れていた。今や自分の存在を知っているのはこの男くらいのものだ。他の人間どもは、自分のことを忘れてしまったと。

『・・・ふふ、そう言えばそちのことを見たことがあったな。そちは覚えとらん様じゃが』
「いや、思い出した」

 不意に記憶が覚醒した。轟々と音をたてて燃える城、その火に照らされて浮かび上がる白と黒の戦装束の男、その男にぴったりと寄り添う目の前のソレ。

『・・・卿には・・・を賜ろうか』
『・・・いらん、自分で奪う』

そう言うと戦装束の男は明らかに動揺した顔を見せた。そうして何かを低い声で呟いた。

『あの時、じゃな。本来ならわらわのモノになる筈であったこの男をそちに取られたのは』
「・・・そうなのか、知らなかった」
『魂はそちに取られた。しかし、この男は未だ、わらわのことを覚えておるよ。ああ、そちが憎いのう。この男は美しく、そしてからっぽであった』

そう言ってくすりと笑う声がした。ソレは松永の顔を黒い手でそろりとなぜる。うう、と彼はうめいた。汗をかいているらしく、額に玉のような粒が浮かんでいた。
なぜか彼女はそれに腹が立った。

「・・・帰れよ。そいつは私のだ。お前にはやらん」
『分かっておるよ。からっぽであったこの男は、いまはもうそちからの執着に満たされておる。・・・ふふ、この男はからっぽであるからこそ欲望に忠実であった。モノに執着した』
「・・・・・・」
『まさか、からっぽの自分の心身をほしがる人間などおるまい、そう考えていたこの男に対して、そちの言葉はどんなに衝撃だったじゃろう』