二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

牧師とVampir

INDEX|2ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 



‥‥‥‥‥。

「う‥‥‥、」


身体が重い。
寝返りを打ちたいがそれさえもダルイ。
一度起きるか?

‥‥‥‥‥。

が、まぶたはそれを拒否ろうとする。
なら逆らわずにこのままもう一度寝るか。
身じろいだその時だった。

「ふっ!!」

わき腹からの激しい激痛に息を飲んだ。

「は、あ‥‥は、は、は‥‥‥っ!」

横になっているのにめまいを感じる。
痛い。
苦しい。
なんだ、何がおきた‥?!

「あ、起きましたか?」

声が聞こえた。
痛みにビビりながらゆっくり顔を上げ、見えた先には見知らぬ長身の男がいた。

「‥だ、だれ だ‥‥‥」

余りの激痛に舌までやられたのか、上手く言葉が出ない。

「覚えてないですか? 貴方、裏路地で倒れていたので私がつれて帰りました。
傷は人間と同じように縫合してみたのですが‥やっぱり痛みますか?
人間と同じ痛み止めとか効きますかね‥?」

話をしているというより最後は自分に言い聞かせているようだった。
むむむと考えに耽っていたニンゲンに、警戒心が高まる。

「‥おま、え‥‥俺がニンゲンじゃないってわかっててつれてきた のか?」

喉が引きつる。
痛みと自分の正体を知っているかもしれない人間に緊張が走る。

相手から殺気は感じられない。
けど、今この男は自分を『ニンゲンと同じように』と言った。
明らかに自分をニンゲンでないとわかった上で言ったのだろう。
身なりはすべてニンゲンと同じ自分を異質の者だとわかる者。
それは同類か、もしくは天敵にしかわからない事だろう。
‥天敵‥。

この深手を負っている状態ではもし新米ハンターであっても今の自分では殺される。
身体が痛い、ダルイ。
こんなに辛いのに、もっと辛い状態になるのか?
苦しい。
怖い。
こわい
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ





「えっと、そうでs‥‥」

相手の男が声を出した瞬間に緊張の糸が切れた。

ずだんと大きな音が響く。

痛みも忘れて相手の男に飛び掛ったのだ。
そしてそのままその首に手をかけ力を入れる。

「はっはぁ‥!はぁ!はぁ‥‥!!」

ここでヤらねば自分が殺される。
でも思いとは裏腹にやはり負っていたダメージがでかかったのだろう。
力がいつものように出ない。
気ばかりが焦る。

「はぁ‥!はぁ‥‥!」

ヤらねば。
仕留めねば。
更に指に力を入れようとしたその時だった。



ぐうううううううううぅ‥‥。




人の上に跨り首を絞めている吸血鬼のお腹からそれはそれは切なげな音が出た。

「あ、やっぱりお腹空いてますか?
今さっきスープも出来た所です。
すぐにでも食べますか??」


それはどう見ても惨劇の被害者であろう立場の人がなんともない風にゆっくりと聞いてきた。
と、いうか自分のお腹の音にショックで指から力も抜けて呆然としていた。
えっと、いま、自分に何が‥‥。

「ってうわあ!」
「今すぐ支度します、少々お待ちくださいです」

今までの流れなんてなんて事ないとでも言わんばかりにむくりと起き上がるとそのまま担ぎ上げた。

「やっぱり軽いですね~。
人の血は上げられないですが、人間の食べ物も美味しいです。
たくさん食べてくださいね」
「は?!つかおまっちょ‥!ぐっ‥!」

軽く抵抗してみるもののどうにもならなかった。
むしろしゃべる自分の声さえ傷に響いて男の腕の中でうずくまる。
…大人しくするしか選択肢はないように思えて不本意ながらなんとか押し黙った。
男にそのままリビングのような部屋に連れて行かれるとそのまま椅子に座らされ、部屋を出ていってしまった。
‥展開が掴めずに、それこそ小動物のように警戒しつつ辺りを見渡す。

部屋はごく普通‥と言いたかったがやはり少し普通ではなかった。

傷を負っていたというのもあるが、やっぱり身体がダルイ訳だ。
ここは教会のようだった。
清められた十字架が小ぶりながら部屋に鎮座しているのが見えた。
そこから感じる清い空気に少しめまいを感じた。


‥‥なんだ、やっぱり天敵なんじゃないかと重いため息が出た。
またわき腹の痛みをじわじわと感じた。
そこに手を当て身体に集中してみる。

他も多少痛みはあるものの、致命傷に近かったのはやはりわき腹の傷だけのようだ。
そのわき腹もニンゲンのように縫合したと先ほどの男が言っていた。
普段ならすぐにでも自己再生で治る傷なのに、未だ治らないこの傷。
理由はわかっている。
が、今はそれを考えている場合ではない。

ここから生きて帰れるか、それだけだった。


「やっぱりニンゲンは嫌いだ‥‥」



「そんな事言わないで下さい。悪い人間ばかりではないんですから‥」


独り言に返事をされてビクリと跳ね上がると傷に響いた。

「いって‥!!」

「ああ、落ち着いてください。なにも貴方をとって食べたりはしませんから‥」

トレイに食事を乗せたものを慌ててテーブルに置くとすぐに痛みに打ち震えているものへと駆け寄る。
うずくまっているのも気にせず上着をめくると傷口を見る。
‥‥‥。

「少し出血してますね‥。食事の前に一度包帯を変えますか?」
「‥いい。大丈夫」
「‥‥そうですか。では食事にしましょう」

多分一度言った事は頑なに通す頑固なタイプだと一目で気づいていた。
傷に触るだろうと思えたが素直に聞くタイプだとは到底思えない。
なら早めに食事をすませて手当てした方が建設的だろう。
トレイに戻り食事を目の前に並べた。
が、相手のその目は疑心暗鬼に彩られている。
ここまできて自分がまだ殺意を抱いているとでも思っているのだろうか。
例えここで食事に毒を盛った所で死ぬタマではないだろうに。
その警戒心の強さになんだか微笑ましいものを感じてしまいふと笑ってしまった。

「‥なにが可笑しいんだよ」
「いえ、お待たせしてしまってすみません。さあ食べましょう」

まだ身体を硬くして睨んでいる姿はさながら警戒中の子猫だ。
また笑ってしまいそうになったのでウーリッヒは自分を誤魔化す為にまず先に食事に口をつけた。
教会という場所柄食事には制限があり、また収入的な問題もある事から質素な食事だった。
だけど味付けには少々自信があるのだ。
ゆっくりと味わうと目の前の警戒中の子猫もお腹を減らしていたのを思い出したらしく興味が自分から食事へと変わったのを感じた。

「お口にあうとよいのですが」
「‥‥‥‥。」

ぱし、とパンを掴むとおもむろに口をつけた。
誰も取りはしないのだし落ち着いて取ればいいのにと思っていてもそれを口に出したりはしない。
我慢強く見守っているともぐもぐと動く口が一言つぶやいた。

「不味い」

今度こそ我慢できず噴出してしまった。
口一杯に詰め込んでおいて不味いって!

「なっ何が可笑しいんだよ?!」
「い、いえ、失礼しました。ではこちらのスープはいかがですか?」

また警戒度が上がったのかじっとスープを睨んだあと、今度はそろそろと手を伸ばしつつ顔を近づける。
本当に何かの小動物のようで可笑しさが募る。
なんとか気をそらしたいのだがどうにも気になって仕方がない。
作品名:牧師とVampir 作家名:へべれけ