牧師とVampir
これは思った以上に大変なものを拾ってきてしまったと今更ながらウーリッヒは思った。
こちらの言う事は聞いてくれないはねっ返りの人外のもの。
でもなんとも愛らしいのだ。
微笑ましい気分でその日少し遅めの朝食をのんびりと終えた。
食事を終えてからまた部屋に戻り傷口を診るとやはり素人目にも危険だと思える程には血が溢れていた。
「‥こんな状態で食事をしていたのですか」
「お前が食事なんて言うからだろ」
「‥‥‥‥‥‥。」
ウーリッヒは牧師であって医療にそこまで詳しい訳ではない。
ので実はこの者を苦しめているだろう弾丸を取り出すべきなのはわかっていたが自分ではそこまでの事は出来なかったのである。
だが出血量をみると危険だろう事は素人目にもわかっていたので、まずは縫合して体力が少しでも回復したらツテにてしかるべき医師に弾丸を取り出してもらおうと思っていたのだ。
なにせこの村には医師が、病院がない。
「痛みはどうですか?」
「‥‥‥‥‥‥」
睨まれた。
そりゃこの傷口で『大丈夫だ』と言うのは嘘か強がりでしかないのだが人としてどうしても無駄な質問をしてしまうのだ。
「傷が」
「‥え?」
「‥体内の弾丸が、身体を焼き続けてる」
「‥‥‥‥」
やはり喰らったのは神の加護を受けた銀の弾丸なのだろう。
人間の武器は通じないと聞いていたが、なるほど回復力を上回る特殊な弾丸の効力が彼の身体を傷つけ続けているのだろう。
人と違うダメージの受け方に多少のショックを受けつつも、これだけは確認しないとと思う事を思い出した。
「貴方は、人を襲ったのですか?」
だから、その様な怪我を負ったのですか?
言葉のすべては紡がない。
だが伝わったのだろう。
ぷいと横を向いていた顔に少しの反応があった。
「最近聞く女性の血を吸っているというのはあなたなので」
「襲った」
「‥‥?!」
「血も、吸った」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
自分でも予測はついていたのに肯定された事に多少の動揺が走った。
「でも、ここ数年は人を殺してねぇ」
‥‥。
「でも、最近の女性を襲って血を吸っていたのは貴方なんですよね?」
「‥‥‥‥・」
「そうなんですよね?」
少し強めに聞けばこくりと首をたれた。
「ならその時に‥被害者の女性を殺めてしまったのではないのですか?」
「‥ニンゲンは、吸われた奴は死ぬか俺等の仲間になると勝手に思ってっけど、そんな事ねぇよ。 吸われたトコが痒くなる事はあってもそれ以上はねぇんだよ」
「‥え?」
「俺は、ニンゲンからしたら化け物かもしれねぇけど、それ程万能ではねえっつてんだよ」
「詳しく、話してください」
「‥‥‥信じねぇよ」
「貴方の話を聞きたいです。話してください」