空と太陽を君に
素足がシーツを蹴ったが、レイは構わず白い内股を強引に開いた。探られた場所が、じんじんと熱を持っているようだった。何時の間にか指が増えてそこを押し広げるように抜き挿しされる。長い間、使わなかったそこは初めての時のように固く閉ざされていて、レイは微かに悦びを感じていたのかもしれない。
「ちょ…マジで、レイ…やめ…」
「どうした?」
「あ、ン…だって…っ」
ぬちゅぬちゅと肉の壁を指で擦られて、シンは息が止まりそうだった。恥ずかしくて死にそうになる。顔を真っ赤にしているシンを見下ろしてレイは軽く笑うと入り口の近くのシンが一番気持ちいい場所をぐりぐりと刺激した。
「あ、やあ!」
二度も放った筈の性器が、また勃ち上がる。
「嫌だという割に、ここは元気だな、シン」
意地悪を言って、指先で先端をピンと弾くと、シンの目尻から透明な涙が零れた。
「う、あ…レイの、ばかっ」
レイの肩に縋りついて体の中をぐるぐると渦巻く快楽に耐える。しかし、言葉と気持ちとは裏腹に、いつの間に狭いそこは中を探る指を奥へ奥へと誘うように収縮し始めていた。
「馬鹿とは何だ、馬鹿とは…ここ、好きな癖に」
「…っひ!」
思い切り指で抉られるように突き入れられて、白い足がブルブルと震える。どうしようもない生理的な快楽をレイの指が齎してくれているというだけで、イってしまいそうだった。
「シン…」
ちゅっとシンの頬に伝う涙を舐めて、レイはキスをした。荒い呼吸のままくたりとしているシンは自分からレイの唇を求めた。何度も何度も飽きずに唇を重ねて朦朧としながらも、とうとうレイを抱きしめたままお願いした。
「も…レイ…指、やだ」
これ以上は耐えられそうにない。
「レイが、いい」
眉間に寄せた眉、睫毛が震えてまた涙が落ちた。
「レイが欲し…っ」
「…シン…力を抜いていろ」
指を引き抜いて、レイはシンの足を抱え上げると蕩けた入り口に猛った自分自身の切っ先をあてがった。ひくついた入り口に思わず期待に喉が鳴りそうになる。
「シン」
熱っぽく、掠れた声でレイが呼ぶと目を閉じていたシンの赤い瞳が小さく覗いた。
「ん、あ…あ…?」
にこりと微笑む。それと同時に細い足首を掴む指に力を込めて、レイはシンの体の内へと一気に沈んだ。
「〜ッ」
声にならない悲鳴がシンの喉から迸る。痛みに背筋を仰け反らせ浮いた腰を捕らえて更に奥へと進むと、きゅうきゅうと粘膜が締め付けてレイの心拍数を上げる。しかし、レイは止まらなかった。奥へ、もっと奥深くへと突き入れてシンの中にある熱を探ろうとするかのように。
「あ…レイ…も、はいんないよっ」
「まだだ、シン。もっとお前の中に入りたい」
我侭を言う子どものように首を振って、なおも腰骨を押し付けると痛むのか、シーツを握り締めるシンの指が白く震えていた。
可哀想にと、どこか冷静に思った。
限界まで拡げた足を更に押し開いて、レイは漸く止まる。
「あ…はあ、はっ…ぁあっ」
呼吸が乱れて、朦朧としているシンの内部の戦慄きを暫らく黙って感じレイはシンを抱きしめた。
「シン…」
すっぽりと腕の中に収まる体は震えていたが、彼はおずおずとレイの背中を抱き返してくる。
「シン、好きだ…好きだ…シン」
深く繋がったまま、首筋に顔を埋めてレイは言葉を紡ぐ。本能に従って動物的行動を起こしているというのに人である言葉を使う。レイはそれが何だか可笑しかったが、止められなかったのだ。
「俺、も…レイ…レイが好き、だ」
ぎゅうっとレイの体を抱きしめて何度も胸に頬を擦り付けた。犬みたいに。
「動いて、レイ…レイが欲しい、から…ぎゅって、して…レイ」
「シン…」
拙い言葉で誘うシンの腰を掴んで、思い切り突き上げる。今度は意地悪などせずに彼が掠れた甘い声を上げる場所を狙って刺激した。案の定シンは、素直に啼いた。
「あ、あン、んっ、ん…あっ」
気持ちよくて、どうにかなりそうだ。
強く揺さぶられる度に買ったばかりのベッドがきしきしと悲鳴を上げる。
突き破るように押し入ればそこは拓かれ、退くと内壁が膨らみ締め付けてはレイを刺激する。戦慄く入り口がレイからもシンからも理性を奪っていた。
「シン…っ」
「ひああっ」
勃起した性器をレイの指が掴んで追い上げる。それと同時にレイもまた自分を解放するために抜き挿しを早めた。
「レイ、れ…ぃ」
「シン…っ」
「や、いく…っ」
レイの肩に爪を立てる。それが合図のように、レイは思い切り突き上げた。
「ああああっ」
世界が一瞬、白んだ。その瞬間にシンは自分の腹の上にパタパタと精液を散らし、レイの熱い熱い迸りを体の中の奥深くで受け止めたのだった。
脱力するように荒い呼吸を繰り返しているレイの体が覆い被さってくる。その重みをシンは呆然と受け止めて彼の首筋に顔を埋めた。
多分、世界で今、一番幸せかもしれない。
長い指が、自分の髪を梳く感触にシンは睫毛を震わせて、薄っすらと瞳を開いた。何時の間にかブラックアウトしていたらしい。それもその筈で自分は今日、退院してきたばかりだったと今更のように思い出した。
覚醒しなきゃと思うのに、レイが撫でてくれるのが気持ちよくて、そのまま、うとうとまどろんでしまいたくなる。
そんなシンを感じ取ったのかレイは苦笑するとシンの額に唇を落として「まだ寝てていいぞ」と内緒話のような声で告げた。
「ん…」
曖昧な返事を返したが目を何度か擦った後、シンはごそごそとレイの腕の中で寝返りをうって、ぴたりと胸にくっついた。
「勿体無いから起きてる」
「…何だ、それは」
折角、レイと一緒にいるのに気持ちよさに感けて眠ってしまうのは嫌だ。体はレイが後始末してくれたのか濡れてはいなかったがだるくて死にそうだった。しかし、不思議と気持ちは満たされていた。
「体は平気か?」
「ああ、うん。平気」
体力が落ちているのは否めないが、これは恐らく取り戻せるだろう。問題は自分よりもレイの気がする。
「レイは…?」
「問題ない。シン…余り…気にしなくていい」
心配そうに見上げてくるシンの旋毛を見つめて、レイは額に口付けて黙らせる。シンの口を塞ぐにはこれが一番だ。
暫らく、黙ったまま静かな空気が流れていたがレイは、ぽつんと言った。
「山に行くか」
唐突な提案に、シンはいつの間にか閉じていた瞼をまた引き上げる羽目になる。
「へ?」
「だから、キャンプに行くんだろう」
「キャンプ…?」
見上げたレイは至極、真面目な顔で呆けているシンを見下ろしている。
「行くんだろう、ルナマリアやヨウランたちと」
「え…あ…ああー!」
訳が分からずぽやんとしていたシンだが、暫らく考えて漸く合点がいったように頷いた。約束した。あれはそう、まだ議長も艦長もいて、これから決戦だと言う最後の二人の時間だった。
「約束…覚えてたんだ…レイ」
「何だ、その以外そうな声は」
「いやだってさ…」
不本意そうに眉を寄せるレイは、どこか照れているのかもしれない。こんなレイの表情は初めて見た気がする。
「うん、行こうよ。休みとれるか謎だけどさ。テント張って、バーベキューして。皆で!」
「そうだな。はりせんぼん、飲まされたら堪らない」
冗談めかして笑う、レイの横顔をシンはそっと盗み見た。
「レイ、約束な?」