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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝その6

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 紅い色を放つ提灯。お陰で夜でも周りは仄かに明るい。そんな提灯はまるで俺に見せつけるように、辺りの惨状を照らし出す。

「いや俺だって被害者だし」

 呟いて見ても何も変わらないが。
 辺りはあの女のスペルカードによって木々は破壊され地面は抉られ。幸いと屋台とその店主には被害はなかったようだ。

「困るよお客さん。喧嘩は余所でやってってばー」

「悪い悪い」

 店主の非難に口だけで謝る。罪悪感だなんてないから。いや、俺だって被害者だし、と先程の呟きを思い浮かべる。こうやって他人に責任を擦り付けるのも、人間らしいな。まぁ、それでも良いかと思う。だって、俺は人間だから。
 俺が見た限りで、女が最後に立っていた場所を見る。
 今はもういない。スペルを発動させ、そちらに俺の気が向いた瞬間に逃げたようだ。
 正直、負けた気がしてならない。試合に勝って勝負に負けたとは、このことを指すのだろうか。
 あの女が一体何者だったのか、どうし人間を嫌い、俺を殺そうとしたのか、俺には理解出来ない。それもそうだろう、其処まであの女のことを俺は知らないのだから。ただ、あの女はこれからどうするのだろうな。俺にしたように、自分が嫌いな人間を拒絶し、殺し続けるのだろうか。
 もし、そうならば――。

「……八つ目鰻をくれ」

「はいよー」

 もし、そうならば、また会うことが無いように祈るだけ。
 八つ目鰻を齧って、ふと思った。
 俺は彼女を拒絶した。では、逆に受け入れていたらどうなっていただろう。
 それこそ、気の合う友人として、今も酒を呑み交わしていたのだろうか。二人で暢気に楽しく話しあい、それを魚に酒を呑む。
 理想としては、そうしたかったと思う。俺と彼女はそれが可能だった。たった一つの違いが無ければ。

「人間ねぇ」

 人間のエゴイズムは救えない。俺だって人間のそういうところが嫌いだ。あの女もきっと其処が嫌いなんだ。問題は、あの女が人間のその部分しか見ていない事。
 俺は人間が好きだ。だって俺も、人間だから。
 人間の否定は自分の否定だ。そうだろ? だってそうじゃないと、俺は人間になりきれない。
作品名:東方無風伝その6 作家名:国城 龍耶