東方無風伝その6
少女と別れ、再び人里内を散策。と言っても町並みは大体解ってきたことだし、そろそろ紅魔館へと向かおうかと思い始めたところ。
さてあいつでも呼び出して道案内でもさせようかと思い、呼び出してみるが返事が無い。
「おーい」
聞こえていない筈はない。だってあいつは何時も俺の傍に『いる』はずだから。返事が無いと言うのはわざと無視しているか、何かしら考え事でもしていて聞こえていないのか、その二択に限られる。
再度呼び掛けるが返事は無い。どうしたものかと思い悩む。
時刻は昼飯時を過ぎた辺り。俺もそろそろ腹が減ったことだし、では先に腹ごしらえでもしようかと思ったが、それで良いのかとも思う。
金は大切に使わなければならない。霊夢から『借りた』金は、数日ならば食に困らないと言った程度。そう無暗に使える金額では無い。
では仕方が無い、何か安いものでも適当に買うか。
いや、待てよ。
これから俺が向かおうとしている紅魔館とやらは、吸血鬼が住まう館だと小町が言っていた。この人里を見れば、妖怪はいても、人里に住まいがあると言う訳ではなさそうだ。きっと紅魔館とやらは人里の外に在るに違いない。今まで人里を散策していて、それらしきものは見なかったこともある。
人里の外ともなれば、妖怪達に襲われる危険性があるだろうが、どちらにせよ紅魔館に向かうのに外に出るのだから問題ない。
外ならば、狩り放題ではと言う事。外には野生動物がいるだろう。それを狩り喰う。別に狩らなくても、木の実や木の根を喰えばいい。そうすれば、金を消費しなくて済む。いやそれどころか、一生食っていけるだろうな。
「うわ、なんっつー野蛮な」
「どうした?」
「おや、今まで何処に」
「ちょっと考え事をしていた」
「そうかい」
傍からから見れば、独り言を呟く変人だろうな、俺は。
別段野蛮だからと言って否定するのではない。最悪そうすることになるかもしれないことだ。
まぁ、でも、折角金が有る事だし。
道具は使うものだ。少しくらい使ったところで、問題は無いだろう。と信じる。