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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝その6

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 夜の森に、場違いな程に紅く明るい屋台に、動くモノは三つだけ。
 店主の妖怪。客の人間二人だけだ。客は互いに言葉を交わすことなんかなく、ただ己の時間に入って悦に入っている。
 見ているだけで、なんとも寂しい光景だろうか。
 客の人間は男と女だった。離れて見てみると夫婦のようだ。
 男は、どうせ暇だと何か話しかけてみようとするが、どうにも女の雰囲気がそうさせないのだ。話しかけるな、と威圧しているようだった。
 男としてはこれは少し迷惑だった。
 夜は妖怪の時間。人間が喰われる時間なのだ。だから、彼はこの場で一夜を過ごし、明日また目的通りに人里に向かおうと思っているのだ。夜はまだ長い。何時までもこんなつまらない時間を、過ごしていたいとは思わない。

「なぁ、其処のあんた」

 ふいに、女が男に声を掛けた。
 男は何処か嬉しそうにそれに応える。

「なんだい」

「あんたは人間なのかい?」

「ああ、人間だ。あんたは」

「あたしも、人間さ」

 それだけ言って、女は酒を呑む。
 男は何処か妙だと思いもしたが、今の女の言葉で、男は自信を持った。それと同時に、匂いに気付いた。
 匂いに女も気付いたか、女は言った。

「あんたは、何処の人間だい」

「此処に俺はいる。何処ではない」

「そうかい……。桜の匂いがしたから、あんたが何処から付けてきたのかと思ってね」

 桜の匂い、と女は言ったが、彼等が感じている共通の匂いはそんなものではない。この二人だけが感じる独特の匂い。

「お前さん、人間は好きかい?」

 男は言った。
 女は、少し悩んで言った。

「嫌いだ。あんなエゴの塊が、どうして地上の王にでもなったかのように振舞うのか、不思議でならない」

「なんだ、嫌いなのかい。俺とは逆だな」

「王ならば、民を、下のモノを憂い救済するべきだ。それなのに、人間は見下し、蹴落とし、迫害し、死に追いやる。理解出来ないな。人間なんて滅んでしまえばいい」

「人間は停滞している。もう進化の兆しなんてない。直に滅びる」

「それでもあんたは、人間を愛すると。最早世界に捨てられたも同然な種族を」

「だからこそ、哀れんでいるのさ」

 男の言葉は、女に苛立たせるばかりだった。
作品名:東方無風伝その6 作家名:国城 龍耶