永遠に失われしもの 第4章
「ここではお体が冷えますから、
お部屋に戻りましょう」
甘い声でそう囁くと、
セバスチャンはシエルの
細くしなやかな体を軽々と持ち上げて、
腕に抱きながら、バスルームを出た。
セバスチャンの首にからみつく
シエルの手は、入浴のせいか
火照っている。
暗く長い廊下を歩み、部屋に戻ると、
セバスチャンは、寝台の上にシエルを下ろして、再び足元に跪いた。
「ぼっちゃん、
まだ他にお決めになっていることが
あるのでは?」
シエルは、瞼を閉じて、微笑する。
「くっ、察しがいいな・・」
「私をお召し上がりになる前に、
お聞かせ願えますか?」
「魔剣を手に入れたい」
シエルは再びゆっくり目を開けて、
セバスチャンを射るようにみつめた。
「やはり、
そう思ってらっしゃいましたか」
セバスチャンの表情が憂いで翳り、
しばらく沈黙が続く。
「理由をお聞かせくださいますか?」
「僕は、僕の誇りと尊厳を守るために・・
僕自身が、未来を選び、決めるために」
「自らの生を絶つと?」
「ああ。」
シエルは、セバスチャンの一層もの憂げな顔を見据えて、毅然として言い放った。
作品名:永遠に失われしもの 第4章 作家名:くろ