二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

銀新ログ詰め合わせ

INDEX|8ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


『野郎も人斬りだ。自分でもロクな死に方できねーのくらい、覚悟してたさ』


「銀さんもそう思ってるんですか?」

 しとしとと細やかな雨が降る日だった。
 柔らかな針の様な天幕をちらりと窓越しに見て、それから新八は専用のデスクに座って怠惰を貪る男に目を向けた。

「何が?」
「だから、この間言ってたじゃないですか。銀さん自身も、自分は碌な死に方しないと思ってるんですか?」

 誤魔化す事は許さぬと真っ向から眼差しを送れば、真剣に受け取る気が無さそうな、しかし逡巡している様な、動揺等微塵も見せない普段と同じ曇りきった眼とかち合った。
 逸らしたら、終わりだと。
 何故かそう思った。理由はよく解らない。
 聞くからにはそれ相応の覚悟が必要なのだ。
 受け取る、受け入れる器でなければならない。
 音の無い雨の音を何処か遠くで聴きながら、新八は長いとも短いとも思える時間を待った。
 それにとうとう根負けしたのか、ゆるり、銀時は一つ瞬きをして、それから徐に口を開いた。

「そうだと言ったら?」

 何時もと変わらぬ覇気の無い声は、然しだからこそ男の本音に違いない。
 男が見せる、数少ない真実の一つ。
 ひゅうと息を飲んで、一度だけ、新八は自身の唇を軽く噛んだ。
 そうしてぎり、と銀時を睨め付けた。

「アンタ、莫迦ですか」

 搾り出した声は、予想以上に怒気を孕んでいた。
 それには流石に驚いたのか、銀時は僅かに瞠目し、それからまじまじと新八を見詰めた。
 新八はひどくゆっくりとした動作でソファから降り、机を挟んで銀時の前に立つ。
 そうして一言、今度はしっかりとした声音で言葉を紡いだ。

「僕は、許しません」
「……何が、」
「アンタが、です。アンタがそう思っている事も、そうなる事も、絶対に許しません」

 アンタは確かに人を斬ったのかも知れないけど、でも、そんな事は無い筈です。
 そう話す新八の顔はくしゃりと歪んでいて、その言葉を裏切っていたけれど、銀時はそれでも良かった。

「もしそうなるのなら、全力で阻止します」

 それが仮令実現不可能であろうと、新八はきっとそれをやろうとするのだろう。
 丸く黒い輝石の中に、笑い損ねた歪な顔をした自分が映っているのを見てしまって、今度こそ銀時はぐしゃりと彼にしては珍しく表情を崩した。
 ゆったりと手を伸ばして、少年の頬を撫ぜる。
 薄い皮膚の下から感じる温度が、とても心地良い。
 そうして銀時は、矢張り彼にしては珍しくふわりと微笑い、

「ありがとな」

 降りしきる銀糸の雨に溶ける様な温度で、ほんのりと少年の心を灯した。


*煉獄関後の話。


作品名:銀新ログ詰め合わせ 作家名:真赭