永遠に失われしもの第5章
「グレル・サトクリフ!
私の出張中、良からぬ事なぞ
してなかったでしょうね!?」
ウィルは死神の鎌(デスサイズ)の刃を
器用に利用して、眼鏡を上げると
鋭い視線を投げかけた。
「い・・いャだ~・・・
ちゃんとお仕事してたわョ・・アタシ」
グレルは取り繕いながら、ウィルを上目遣いで見た。
「まぁいいでしょう。
あとで書類を精査しますから」
「そんなことより、ウィル~~~
お土産で頼んだ化粧品とか・・
買ってきてくれてないノ?」
慌てた様子で急に話題を変えるグレル。
「買うわけないでしょう。
遊びに行ってきた訳ではありませんから」
「出張手当もらってくるクセに!
ウィルのケチ!!」
ウィルの気が反れたことに、
内心ほっとしているグレルだったが、
まだまだ気は抜けない。
ウィルはなかなか鋭い勘をしているし、
グレルがセバスチャンに、並々ならぬ好意を抱いていることはよく知っている。
死神が、悪魔に手を貸したり、
情報を漏らしているなぞと知れたら、
今度こそ降格や謹慎どころか、
免職の可能性すらあるのだ。
「そんなことより、
はやく用意なさい
セバスチャン・ミカエリスを狩るのに
一刻の猶予も許されません」
「セバスちゃんに会える~~~」
真紅のコートをはためかせて、
小躍りするグレル。
「アナタが彼をどう思ってるかまでは
私は関知しませんが、
仕事に私情を挟むのは禁物ですよ。」
「当たり前ョ~」
ウィルの緑色の瞳はさらに鋭さを増した。
「やはりアナタは信用できませんね。
今セバスチャン・ミカエリスと
その飼い主はバチカンにいる
という情報があります。
私とロナルド以下のチームはそちらへ。
グレル・サトクリフ!
アナタは彼らがその前に居た
古城を調査してきてください。」
「ええええ~~~~・・・
それじゃ、
セバスちゃんに会えないじゃない
もう、ホントにウィルってばケチ!!」
「いいなぁ。
先輩、ソレって
超ラクそうな仕事じゃないッスか~」
傍で用意をしていたロナルドは、
心底うらやましそうな顔をしている。
ウィルは、そんなロナルドを険しい目で
睨みつけた。
「ロナルド・ノックス!
アナタは新人なんですから、
悪魔狩りはアナタにとって、
いい経験になるはずですが!?」
「へーい」
ロナルドは渋々答えて、
先に空間をデスサイズで切り開いて
消えていったウィルを追いかけた。
「セバスチャン・・」
死神派遣課に、ただ一人まだ残っている
グレルは心配そうに、ひとりつぶやいた。
作品名:永遠に失われしもの第5章 作家名:くろ