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永遠に失われしもの第5章

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セバスチャンの古城の中庭に、音も無く
 降り立ったグレルは、片隅にたわわに
 実をならせる無花果の樹に近づく。


 「アア・・アナタは禁断の果実。
  ひとたび口をつけたなら、
  楽園追放間違いナシ!!

  それでもセバスちゃん~~~
  アタシは譬え何を失ったっテ・・・

  ・・・・・

  ・・・ア~ 
  やっぱり本人がいないんじゃ
  いまいち盛り上がれないヮ」



 グレルは乱暴にもぎ取りかぶりついた
 無花果の実を投げ捨てた。


 「まァ、いいヮ。
  この機会にセバスちゃんの秘密に迫って
  お宝ゲットしなくチャDeath!」


 そう言い終わるのが早いか、
 グレルは目にも止まらぬ速さで駆け、
 全ての部屋を隅々確認し始める。


 「ィャン・・・セバスちゃんってば
  やっぱィィ趣味じゃな~ィ!

  あと残るのは、執事室と、
  ガキの客間だけみたいネ。

  それでは執事室へ Let's go!」

 心ときめいた様子で扉を開けようとするグレルだったが、すぐに失望の色を見せる。

 「鍵かかってるじゃナーィ!!
  ま、懐の甘い男は好みじゃないしネ!」

 とつぶやくや否や、
 グレルはチェーンソー状のデスサイズで
 扉ごと粉砕する。

 「やっぱ持ってきてよかったヮ~コレ!」

 ジャリジャリと音を立てて、
 木片の散乱する部屋に入るグレル。

 「ァ~いいヮァ!セバスちゃん。
  アナタの匂いが充満してル!
  まるでアナタに抱きしめられてイルミタイ!
  もっと力強く!抱きしめテ!」

 殺風景な部屋の中、顔を上気させながら、グレルは洋服ダンスに近づき、
 片っ端から服を引き出して、
 その中に顔を埋める。

 そして素早くセバスチャンの燕尾服や執事服一式を実にまとい、赤色のコートを上から羽織った。
 
 「ア~、セバスちゃん・・
  アタシたち、
  今一つになってるヮ・・・」

 随分長い時間その場に
 グレルは立ち尽くしたまま、動かない。

 グレルの脳裏には、
 セバスチャンの端正で妖艶な顔が、
 様々な表情と共に浮かび上がる。
 
 中でも最も印象的に浮かぶのは、
 初めに互いに殺そうとしたときの、
 真剣に自分を見つめるその瞳と表情。

 殺気に満ちた冷たい視線に見つめられると、いつだって金縛りにあったように魅せられ、心惹かれ続けた。


 「やっぱりその顔が一番素敵ョ
  セバスちゃん」

 
 その顔を、
 その表情を、
 その一瞬を

 永遠に残せるとしたら、
 たとえどんな犠牲を払ってでも
 手にしたい。


 今まで一度として
 害獣ともいえる悪魔なぞに
 ここまで心を奪われたことはない。
 それがどんなに美しかったとしても。
 

 「真実の恋とは・・いつでも一目惚れ」
 

 グレルは、突如顔を歪めたかと思うと、
 長い付け睫毛の上に小さな雫を浮かべた。


 「これがきっと
  最後のアナタの
  思い出の品になるのね。

  ・・・・・・

  アナタを永遠に忘れない・・・

  ・・・・・・」


 しばらくその場に立ち尽くしたグレルは
 大きく息を吐いて、一段低い声でつぶやいた。
 

 「さぁ最後はお仕事の時間ね」
作品名:永遠に失われしもの第5章 作家名:くろ