永遠に失われしもの第5章
衛兵はバチカン秘密文書保管所の前まで来ると、
「エットーレ枢機卿は
執務室にいらっしゃいますので」
と一礼して、踵を返し去っていった。
代わりに保管所付きの衛兵が、
シエルとセバスチャンを先導しようとする。
「My load
私は外でお待ちします」
セバスチャンは胸に手を添え、
丁重にお辞儀をした。
シエルは自分を一人で行かせるのか?
と訝しげな顔をして
セバスチャンを振り返ったが、
すでにセバスチャンの姿は無かった。
仕方なくシエルは
衛兵の後をついて歩き始めた。
高い天井いっぱいに絢爛豪華な
フレスコ画がひしめいている。
どれも宗教的な題材ではあるが、
色とりどりに描かれている画は
厳かというよりは、華やかだ。
ブロンズで象られた
代々の教皇の胸像を幾つも通り過ぎた後で、
衛兵は待合室にシエルを通し
また帰り去って行った。
・・何をしてる?セバスチャン
僕の命令もなしで・・・
作品名:永遠に失われしもの第5章 作家名:くろ