東方少女SS集
「嫌い、大嫌いに決まってるじゃない!!!!とっても憎いわ。憎いわよ!!」
口から飛び出すは、輝夜の気持ちとは真逆の言葉。
輝夜は気付いてしまった。
ついに気付いてしまったのだ。
もう元にはもどれない。
輝夜はこの気持ちに気づきたくなかった。
名前すらつけたくなかった。
妹紅と戦っていく内に。
妹紅の夜風に戦びく綺麗な白い髪を見ている内に。
妹紅が見せる端正なな横顔に見とれている内に。
妹紅の名前のように紅く透き通った瞳が自分をとらえている内に。
やっと、通せんぼの意味がつかめた。
やっと、自分のいらつきの原因をつかめた。
胸が痛いのも、不快なのもぜんぶこの感情のせいなのだ。
同時になにかがぱらぱらぱらぱら崩壊していく。
「ならば慧音を殺さなくっていいじゃないか!!!!!殺すなら私を殺せ!!!!!!!!」
「あはははははははははははははははは、あんたの無様な顔が見たかったのよ!!!!!ああ、楽しいわ!!!!!!!」
響く愉悦の笑み。
輝夜の顔も醜く歪む。
慧音を殺したのはウィルスのせいではなくて自分。
妹紅の苦しむ顔がみたかったから慧音を殺した。
そう、自分に言い聞かせる。
自分と妹紅の関係を崩したくなかったのだ。
しかし、輝夜の胸に鈍痛が走る。
また胸が締め付けられる。
建前と本音のはざまで揺れる感情。
「てめえ…」
「あはは、私が憎いでしょう?憎ったらしいでしょう?いいわ、そんなに憎たらしいのなら消えてあげる。あなたの前から一生」
輝夜はある一つの名案が浮かんだ。
とっても簡単で手軽な方法。
「お前、何を言って…」
妹紅の歪んだ顔がほんの少し戻る。
「安心しなさいよ。私は消えるから。あなたもお望みなんでしょう?」
一瞬だけ輝夜は力の無い笑みを妹紅に見せた。
しかし、妹紅は気付くことはない。
さあ、これでおさらばね、といって輝夜は妹紅に背を向けた。
「さようなら、妹紅、永久に」
「ああ!二度と私に顔を見せるな!!!そのまま消えろ!」
輝夜は自室を出ていく。
妹紅はすっきりした気がした。
けれどもなぜか奇妙な違和感を抱いた。
説明できないような違和感だった。