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だぶるおー 天上国2

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 外から姿が見えなければ良いのなら、バルコニーのある部屋へでも移動させてやればいいのではないか、と、教授に言われて、ハワードも頷いた。主寝室ではなくて、その夫人の部屋になる場所は、バルコニーがあって、大きな窓がある。現在の城主であるグラハムが、夫人を持たないから、空室になっている。そこなら、少し気も紛れるだろうと、部屋を移動させることにした。
「なあ、ダリル、ハワード、俺は、おまえらに尋ねたいんだが・・・おまえらの姫様は、ただの男で、どう見ても、そっちの趣味はない。それで、グラハムが花嫁にするって言ったら賛成なのか? 」
 あれが帰って来て、ロックオンのケガが癒えたら、いや、癒えなくても、あの男、襲うに違いない。そういう気があるなら、ジョシュアも気にしない。そういう趣味があるのは理解している。だが、どう考えても、今の場合、ロックオンは受け入れるとは、到底思えない。無理矢理そういうことに及んだ場合、それは強姦というやつで、非道な行いだと思われる。それでも、グラハムが言うなら従うのか、と、率直に尋ねてみた。二人は、顔を見合わせてから息を大きく吐いた。
「できれば、姫君に隊長の気持ちを受け入れていただきたいと思っている。」
「姫君が絆されてくだされば、そこは問題ないだろう。」
 だから、こういう意見になる。
「けどな、あいつは目的があって王都に向かってたわけでさ。それに、里心つくっていうなら、家族とかあるんだと思うぜ。」
 逃げられるようになるまで耐えてもらうというのも手ではあるが、それだって納得はできないだろう。
「ジョシュア、隊長が想いを伝えて、姫君が解ってくださるという場合もあると思うぞ。」
「ハワード、それ、無理があるって。」
「いや、そうとは一概に言えないさ。まあ、そこは、隊長ががんばってくださればいいだけだ。」
 どうあっても、そういう意見であるらしい。ということは、かなりの確率で、ロックオンは襲われることになる。まあ、まだ時間はある。グラハムが戻るのは、十日は先だ。
「ただな、姫君が泣かれるようなことは、俺も反対だぞ? ジョシュア。」
 どうやって逃そうか、と、考えていたジョシュアに、ダリルは声をかける。随分と親しく話すようになったから、気性のいい姫君だとは、ダリルも思っている。
「私も、それは避けたいと考えている。ただ、うちの隊長は、ああいう方だからな。止められるとは思えない。」
 被せるようにハワードも呟く。一月近く話し相手をしているのだから、親しくなっている。できれば、絆されてください、と、土下座したいくらいの気分だが、気持ちなんてものは、そんなもので変えられるものではない。
「とりあえず、明日にでも部屋を移って頂こう。隊長がお帰りになるまでに、姫君には少しでも回復してもらわなければならないからな。」
「そうだな。花でも飾ってもらうとするか? 」
「じゃあ、俺、ロックオンにそう伝えてくる。」
 当面は、回復してもらうことに専念することにした。問題は、まだ十日先にしか起こらない。それまでは、お互いに、その問題は、頭の隅に追いやっておくことにした。





 ニールを見失ったと報告された場所は、何もない場所だった。AEUとユニオンの境界線辺りだと言うから、この辺りだ。だか、そこには、何の痕跡もない。ただの峠道に過ぎない。
「デュナメス、何かわからないか? 」
 ここには、気配も何も残っていない、と、相手もがっかりしている。とぼとぼと峠道を歩いて、日が暮れた。野宿するしかない場所なので、ティエリアは、安全そうな場所を探して、そこで馬を下りた。食料と水は、少し確保しているから、それで腹を満たして焚き火を前にする。デュナメスは、そこいらの草を食んで、それから焚き火の傍に来た。
「なぜ、あの人は、こうなんだ? 俺やおまえまで置いて出かけるなんて・・・ったく・・・」
 もう何度愚痴ったかわからない言葉を吐き出して、ティエリアは枯れ木をくべる。パチパチと音がして、火の粉が少し舞い上がる。毎度のことながら、ニールは、自身のことには無頓着というか、ボケているというか、そういうところがある人だ。初めて出会った時だって、もうちょっと警戒するなり、疑うなりすればいいものを、あっさりとティエリアを同行させてくれたのだ。お陰で、自分は無事に天上の城に辿り着いて、そこで働いている。今でこそ、ハプティズム家当主の護衛なんてことをやっているが、出会った当時は、まだ魔法力も僅かで、それでいて、世界一の方術使いだと威張っていたのだ。
 たまたま買出しでやってきていたニールが、人が住むには不自由なオアシスに暮らす変人だと聞いて、興味を持った。ニールが住んでいるオアシスは、悪い精霊が暮らしていて、人を遠去けると言われていた場所で、それまで、誰もそこには住めなかったのだ。そこに暮らしているからには、それなりの魔法力を持っているのだろうと思われた。
「力比べをしたい。」
「はあ? 」
「おまえは、悪い精霊を退けてオアシスに暮らしているんだろう? それほどの力があるなら、俺と戦え。」
 その当時のティエリアは、世界で一番、自分が強いと思っていた。かなりの術を使えるし、今までも、それでやってきていた。誰にも負けたことはない。だから、今度も力比べをして勝つつもりだった。だが、相手は、へらりと笑って、「悪い精霊なら、一緒に暮らしてる。それに、俺は魔法なんて使えないぜ? お嬢ちゃん。」 と、言ってスタスタと歩いていってしまった。買出しに来たニールは、市場でいろいろなものを買い込み、荷造りする。何度、挑発してもノッてくれないばかりか、小さなオレンジをナイフで剥いて、「食べな。そんだけ喋ったら、喉が渇くだろ? 」 と、渡してくれる。そうこうしていると、買出しは終ったのか、ニールは馬に跨ろうとする。
「待て、それなら、俺も同行させろ。そのオアシスの悪い精霊と勝負する。」
「いいけど、そんなことして何が楽しいんだ? 」
「俺は、修行している。その一環だ。」
「修行? お嬢ちゃんは、ここの人間じゃないのか? 」
「違う。俺には故郷はない。」
 ティエリアは、妖精の取替え子だった。この世界では、妖精たちが悪戯をする。自分たちの子供と人間の子供を取り替えてしまうのだ。人間たちは気付かずに、その子を育てるが、いつか、気付いてしまう。ティエリアも、魔法力が発動した時に、人間の両親に気付かれた。だから、そこからは、一人で生きてきた。両親は気付いて、すぐに遠く離れた寺院へティエリアを放り込んだ。寺院には、そんな子供や孤児たちがいて、そこで大きくなるまで育てられる。その間に、ティエリアは自身の魔法力を磨いて、そこを出てきた。それからは、一人だ。
「そういうことなら、構わないが・・・・何もないとこだぜ? 帰りは送ってやるつもりはないけどいいのか? 」
「問題ない。それから、俺は男だ。」
作品名:だぶるおー 天上国2 作家名:篠義