アカシアの樹で待ってて
最初は獄寺が偽者なんじゃないかとツナと騒いだけど、結局そんなはずもなく。なら獄寺の沸点が上がったのか、そうなら喜ばしいってツナは思ったみたいだけど、先日学校にランボが乱入して来た際には獄寺がブチ切れて、花火でぶっ飛ばしたりしてたのでその説は却下。
ツナから見たオレと獄寺の関係というのは、オレが無意味に獄寺に絡んで獄寺がキレてオレが宥めて獄寺が妥協する、こういう流れをひたすら繰り返していることなんだろうなと思う。実際、オレもそうだ。二人きりの時だって、あんまり大差がなかったと言えるぐらいには、オレ達はそういうものだった。
ツナとしては、日頃からオレ達に仲良くして欲しいって言い続いけていて(まぁ、ツナの知らない所でオレ達は凄く仲良くなったりしてた訳なんだけど)それが獄寺によって実践されているのだから、文句を言えるはずはないんだけど。
やっぱりそんなツナにしても今の獄寺のオレへの対応は薄ら寒いものがあるらしい。
最初は罪悪感からオレに優しくしているのかと思って、実はオレも好きな子がいるからって言えば丸く収まるかなとも考えた。でも、それは違うのだ。
獄寺はオレに優しくなった訳じゃない。憎まれ口を叩いたり、怒ったりということをしなくなっただけだ。オレに対して……感情を動かさなくなっただけ。
二人でつるんでた時なんかは良く獄寺ツナにばっかり優しい! オレには怒ってばっかなのに! ってオレは文句を言ったりしてた訳だけど、それだって冗談の延長みたいなもんだった。こんなことになってオレは獄寺に怒鳴られることがなくなり、以前の希望は叶ったはずなのに、今の状態は酷く味気ないし、居心地が悪い。そして何よりも――――淋しい。そう、この状態はありえないぐらいの淋しさをオレに与えるばかりだったのだ。
作品名:アカシアの樹で待ってて 作家名:高梨チナ