永遠に失われしもの 第8章
折り目正しいスーツをぴっしり
着こなして、椅子に足を組みながら、
いかにも堅物そうな、角ばった黒眼鏡を
中指であげた死神は
不機嫌を丸出しにしながら言った。
「で、その格好の説明はなんです?」
彼の目の前の真紅のコートを羽織った、
赤い髪の死神は、その堅物の死神から、
いつ鉄拳が繰り出されるかと、
びくびくしながら答えた。
「ウィル!だからァ~、
ちゃんとアタシが調査に行って、
お仕事した証拠としテ・・」
「グレル・サトクリフ!
ふざけてるのなら首ですよ。
害獣の住居の調査で、
アレの服を着て帰ってくるなんて、
貴方は一体何をしてきたのか?と
聞いてるんです!」
「ダカラ、別に深い意味はァ~・・」
「確かに害獣を保護する規律は
ありませんので、
貴方がアレとどんな関係を結ぼうが、
自由ですが・・・
貴方正気ですか?
獣と交わるようなもんなんですよ!」
「ィ・イヤダ~・・・ウィルったらッ!
アタシたち、まだ結ばれてないノニ・・
ソレは・・
コレからのお・た・の・し・み!」
「そんなに入れあげて、
アレを狩れるんですか?貴方に」
「ウィルだって、
セバスちゃんを仕留め損なったクセに!
でもお陰で、
もう一生会えないと思ってた
セバスちゃんに会えたからいいけどサ」
「なんでソレを知ってるんです?
貴方はやっぱりアレと会ったんですね」
「フフ、内緒!」
「密会のあと服の取替えっこでも
したんですか?」
「ァ~その想像、萌えるヮ~!
ウィルったら、妬いてるの?」
「その件、報告書お願いしますッ」
と言いながら、げしげしと
グレルに蹴りを入れるウィル。
「アタタ・・・
心配しないで、ウィル。
セバスちゃんを狩るのは、
このァ・タ・シ
だってアタシ達が結ばれるときは、
セバスちゃんは、私のデスサイズで
真っ赤な血に染め上げられる
その時なのョ。
ァ~たまらないヮ~、あの美しい顔が
苦痛に歪んで、泣いて叫びながら
私のデスサイズに悶えるノッ」
「それは私も見てみたいものですが・・・
ところで、貴方は
相変わらずソレ使ってるんですか?」
と、ウィルは冷たい一瞥を、
グレルのデスサイズであるチェーンソー
に向ける。
「だって、ウィルのは、ださ・・・
イエイエ、使い慣れたのじゃないト、
セバスちゃん相手じゃ厳しいからサァ」
「成程」
「ところで、ロナルドどこ行ったのぉ?」
ふと死神派遣課に、
いつも生意気な後輩のロナルドの姿が
見えないことに、気づいたグレル。
「彼はしばらく、戦線離脱です」
「エェ~、だらしな~
セバスちゃんを狩るんじゃなく
狩られちゃったのォ~?」
ばきっと大きな音がして、グレルの頬に
ウィルの鉄拳が炸裂した。
「イタタ・・・チョッと!
顔はやめてョッ」
「ともかく、私はこれから
ロナルドの怪我の様子を見に、
見舞いに行ってきます。
あなたは、報告書と
その服のことについての始末書
今日中に提出お願いしますよ」
グレルはげんなりした顔で返事をしたが、
ウィルがごそごそと紙袋から、
何かを出しているのを見つめた。
「ウィル~~~~
アノ・・白菊の鉢植持って、お見舞い?」
「ええ、死神にとって白菊は基本です
早く書き上げてくださいね。
私が戻り次第、
新たな作戦を展開しますので」
作品名:永遠に失われしもの 第8章 作家名:くろ