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永遠に失われしもの 第8章

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 気味の悪い葬儀屋と交代するかのように、
 ローマ警察署長と、刑事が、
 教皇執務室に通された。


 「睨下、ご命令通り、
  市中に非常線を張りましたが、
  そろそろその目的を
  仰ってはいただけませんか・・・

  法王庁関係者、並びに巡礼に来た者、
  マフィアに殺し屋など
  睨下に命ぜられた者を
  重点的に探しておりますが、
  何せ範囲が広すぎまして・・・」

 
 額の汗をハンカチで拭いながら署長は、
 白い法衣に身を包んだ教皇に訴えた。

 
 「そちらは?」


 教皇は、見知りの署長の脇に立つ、
 三十代半ばの男について尋ねる。

 
 「これは、うちの凶悪犯罪課の
  主任刑事ラウルです」

 
 ラウル刑事はひざまずき、
 教皇の差し出した手にキスをした。

 
 「まだ公式に発表するのは
  控えて頂けるなら、お話しましょう」


 教皇の決断に、執務補佐官は驚き、
 目を見開き、教皇を見つめている。


 「すでに寺院の鐘が示すとおり、
  ある枢機卿が今夜亡くなりました」


 教皇は胸で十字を切り、
 指を組み天を仰いで短く祈りを捧げる。


 「お悔やみ申し上げます。
  で、何か事件性があると?」


 しばしためらった後に、
 教皇は静かに答えた。


 「ええ、明らかに何者かによって
  殺害されたのは間違いありません」


 「被害者のお名前を
  伺ってもよろしいですか?」


 彼らも教皇に直々に呼ばれたことで、
 そこまでは予想していた。
 聞きたかったのは、
 誰が誰に?という一点だったのである。


 「殺されたのは・・・
  エットーレ卿でございます。」


 教皇が目で合図して、執務補佐官が
 代わりに署長の質問に答える。

 被害者について色々想定してきた
 署長と刑事であったが、
 正直、その被害者は彼らの想定外だった。

 エットーレ卿といえば、法王庁では
 教皇に次ぐほどの権力を持ち、
 彼の政治手腕や、たびたび噂される
 黒い手口で相手を失脚させるやり口は、
 恐らく敵も多く作ったであろうが、

 その狡猾さは、常に相手を上回り、
 誰かを秘密裏に抹殺することはあっても
 誰かに殺されることは考え難かったのだ。


 「あなた方には、エット-レ卿が
  最近接触した人物を探し、
  見つけ出してほしいのです」

 
 教皇は彼らにそう告げると、
 補佐官に命じた。

 
 「彼らに、捜査に必要な書類を!」


 「は!」


 廊下にでるや否や、ラウロ刑事は
 補佐官に言った。


 「死体を検分させては、
  頂けないんですか?補佐官」

 「それはさすがに・・・」


 と丁寧に断ろうとする補佐官だったが、
 ラウロはさらに食い下がる。


 「別に死体を解剖するとか、
  そういうことじゃないんですよ。

  ただちょっと見せていただくだけでも、
  捜査にかなり役立つんでね。」

 
 廊下を歩く間もずっと、
 粘り続けるラウル刑事に根負けして、
 補佐官はエットーレ枢機卿の執務室へと
 署長と刑事を案内した。

 確かに部屋の中は、
 壁という壁が血まみれになっており、
 その中に仰向けに寝かされた
 エットーレ卿の死の様子からしても、
 他殺としか考えようもない状況だった。


 死体の側に、
 非常に長い銀髪の男がしゃがんでいる。
 なにやら死体にぼそぼそ話しかけていて、
 ラウルは薄気味が悪くなった。


 「あれは?」

 
 小声で補佐官に尋ねるラウルに、その銀髪
 男はふらっと立ち上がって言った。


 「私は死体を綺麗にするために
  呼ばれたのさ....」

 「ああ、葬儀屋さんだったのですね、
  あなたのお仕事の前に、
  ちょっとだけ見せてもらっても
  宜しいですか?」

 
 しばらく刑事が死体を検分している間、
 葬儀屋はフンフンと鼻歌を歌って、
 持参したのであろう妙な形のクッキーを
 バリバリと食べながら、
 ソファーでくつろいでいる。