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だぶるおー 天上国 王妃の日常1

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 中庭にやってきたラッセが、その場に合流する。ここのところ平和でのんびりしているから、軍事関係の人間は暇だ。訓練ばっかりでは飽きてしまう。
「て、ニール、あんなとこに放置してんのかよ? いいのか? 」
「疲労困憊だ。起きねぇーよ。」
 ラッセも、空中で手を捻り、飲み物と食べ物を、そこに現出させて笑っている。思いを遂げた刹那に、ラッセも安堵しているが、さすがに、ニールの様子には不憫だなあ、と、思っていたりする。
「お、いいことしてるじゃねぇーか。」
 今度は、コーラサワーだ。こっちも自分の分を用意して座り込んで、似たような感想を漏らす。そして、エイフマン教授とビリーも、その騒ぎに顔を出した。
「おや、王妃様じゃないか。」
「あれは放置しといてください。まあ、教授、一杯どうですか? 」
「午後から打ち合わせがあるんじゃが・・・まあ、一杯くらいはいいか。」
 男が集まると酒盛りになるのは必定で、まあまあと宴会ちっくなことになってくる。ビリーは、眠っている王妃の側まで様子を伺いに行ったが、あれぐらいでは起きないから、と、みな、放置したら、ジョシュアの横に投げ飛ばされて戻って来た。
「うわっっ。」
 びっくりしてジョシュアが立ち上がると、ゆっくりとデュナメスが近寄ってくるところだ。
「はあ? キスしようとした? おいおい、ビリーさんよ、それはまずいだろ? 」
 デュナメスのお怒りを聞いたラッセが通訳する。ここには、それが聞こえない教授やジョシュアがいるからだ。
「「「「キスぅぅぅぅぅ?」」」」
 全員、転がっているビリーに目を遣る。どうやら惚れっぽいらしい。スメラギにご執心で、口説きまくっていたはずなのに、王妃に手を出そうとは、知らない人間は恐ろしいと、城の住人たちは渋面を作っている。
「眠り姫には目覚めのキスだと思ったんだが・・・」
 腰を擦りつつビリーも起き上がるが、その前に近づいているデュナメスはタテガミが総毛だって興奮していなないた。俺の嫁にキスだとぉぉぉぉーーーっっ、と、怒鳴っている。
「待て、デュナメスッッ。」
 ラッセが慌てて通せんぼだ。さすがに、客人を痛めつけるのはまずかろう。だが、誰の言うことも聞かない妖精の馬は、ラッセすら襟首を掴んで放り投げる。
コーラサワーも、ついでとばかりに投げられた。もちろん、ジョシュアも同様だ。
「おまえな、王妃にキスなんぞしたら殺されるのは確定だ。」
 悠々と酒を呑んでいるアリーは、へらへらと笑いつつ、ビリーに声をかける。
「え? だが、美しい人には心を奪われるものだ。私は、己の心に正直に、ですね。」
 いや、正直すぎるだろ、と、投げ飛ばされた面々はツッコミだ。というか、あれにキスしたいか? どんだけ趣味おかしいんだよ、と、その気のないジョシュアにいたっては、ある意味、罵詈雑言吐いている。踏み潰してくれるぞ、この下種がっっ、と、デュナメスが前足を高く振り上げた瞬間に、ティエリアが空間に現れた。
「デュナメス、待て。それは殺すな。」
 妖精の馬を魔法力で持ち上げて、少し離れた場所に移動させる。怒っているデュナメスに、ティエリアは跨った。
「暴れるな、ニールの眠りを妨げるつもりか? 」
 王妃は、疲れピークなのか、この騒ぎでも起きないが、ここで断末魔の叫びなんぞあげられたら、さすがに起きるだろう。そして、びっくりして腰を抜かしたビリーの前に、さらに、色とりどりの毛皮を纏った大型の猫が何頭も現れて威嚇する。
「ティエリア、俺も連れてけよっっ。ハロ、かまいやしねぇーそいつを齧れ。」
 はあはあと走ってきたライルも、とんでもない指示を出す。ハロと呼ばれる大型の猫は、ディランディーさんちに居ついている精霊たちだ。普段は、小さな猫型だが、戦闘モードだと大型に変化する。デュナメスの怒りの声に反応して飛び出てきたらしい。さらに、ライルも駆けつけてきた。ブラコンファザコンコンビは、寝室に誰も居ないから探していた。そこへ、デュナメスの怒鳴り声だ。慌てて駆けつけてきた。
「待て、ライル。客人に傷は負わすな。」
 それはまずいだろうと、ラッセが止める。自分に力を貸してくれる精霊たちを呼び出して対峙させた。こちらは、猛禽類だ。
「うちの兄さんにキスしようなんて、三回殺しても飽き足りないぞ。」
「なんで、三回なんだ? いいから、ハロ、静まれ。ニールが起きる。」
 大騒ぎになってきて、こりゃ収拾がつかないな、と、コーラサワーが考えていたら、「何してるのっっ? 」 と、鶴の一声だ。
 そして、うにょうにょと大蛇が、そこに割ってはいる。かなり大きいので、ハロなんか踏み潰せそうだ。
「こんなところで騒がないでちょうだい。仕事にならないわ。・・・あら、ニールのお昼寝なの? なら、あなたたちは関係ないでしょ? 」
 シーリンが、一瞬で騒ぎを沈黙させる。大人しくなった動物たちが、戦闘モードを解いたら、シーリンの蛇も消えた。
「だって、シーリン、こいつ、うちの兄さんにキスをっっ。」
「未遂でしょ? ライル。騒がないの。ニールが、せっかく体力回復させてるんだから寝かせておいてあげなさい。・・・ハロ、ニールの護衛をしてあげて。デュナメスもよ? 」
 ギロッとシーリンに睨まれると、ハロたちは小型の猫に戻って、ニールの傍に寝転ぶ。デュナメスも戻った。やれやれ、と、シーリンは腰に手を置いて、はあ、と息を吐いた。それから、教授に視線を移す。
「エイフマン教授、ご自身の助手のしつけはしてください。王妃に容易く触れるなんて、首を刎ねてくれ、と、言うのと同じことです。」
「すまない。」
「ビリーさん、なんでも本能の赴くままに行動されては困ります。今回は、大目にみてさしあげますが、次回は叩き出しますから、そのおつもりで。」
 ビシッと人差し指を突きつけて、シーリンは命じた。背後から、「このトンチキ野郎、次は殺すぞ。ごらぁぁっっ。」 というオーラが滲み出ているので、ビリーも大人しく頷いた。





 さて、外の騒ぎとは関係ない城の宰相の執務室で、アレルヤと刹那は、静かに話をしていた。会議が終ってから、アレルヤが刹那を執務室に誘った。
「話はなんだ? 」
 さっさと戻って、ニールの顔を拝みたい刹那は、用件を問いただす。無口で冷静な王様だが、こと、王妃に関することになると、せっかちになる。
「あのね、刹那。ニールと、どんなに身体を重ねても、その飢えは満たされないんだよ。」
「なに? 」
 刹那の飢えている気持ちを、アレルヤは理解している。それは、簡単に静まるものではない。自分もそうだったからだ。
「半年抱き潰すように抱いても、その飢えは治まらない。だいたい、半年や一年で、恋焦がれた相手に満足すると思うの? 刹那の気持ちは、そんなに薄っぺらいもの? 」
 気持ちを押し付けるだけでは変らない。どちらもが歩み寄らなければ、気持ちは満たされない。刹那より長生きしているアレルヤでも、そのことに気付くのに半年ほどかかった。一方的な想いでは、いけないのだと理解して、そこから関係は変ったからだ。