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だぶるおー 天上国 王妃の日常1

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 王妃に指名した時も、それについて話し合うことはなかった。ニールが、「仮に、そういうことにしておこうな。」 と、言っただけで、刹那の言葉なんて取り合ってくれなかったからだ。AEUの不穏な動きもあって、それに対応すべく、みな、忙しくしていたから、実際に顔を合わせていたのも少ない。ニールは、その時、人革連までセルゲイの召還に出かけていたし、その後も、必要だと思われる人材を探して外を飛び回っていた。AEUの侵攻が始まってからは、それを防ぐために戦った。そんな十何年だったので、ゆっくりと話し合うことはできなかったのだ。ようやく、それも収まって、これから、という時に、ニールは逃走した。
 もうなんていうか、刹那の先手先手と打ってくるので対応できなくて、後手に回る。いろんな教育をしてくれたのが、ニールだから、刹那の行動パターンもお見通しなのだろう。
「飲め。」
 横手から差し出されたのは、冷たい飲み物だ。ティエリアが運んでくれたらしい。
「俺は、ニールの休養を要求する。」
「・・・ああ、そうだな。しばらくは、しない。」
 ティエリアの言葉に、刹那は素直に頷いた。ある意味、兄弟のように育ててもらったから、ティエリアとは、隠し事はあまりない。
「おまえはやりすぎだ。ニールだから、何も言わずに相手をしてくれるんだぞ? 普通なら、叱られているところだ。」
「そうだろうな。・・・ティエリア、ニールと俺には子供は作れないが、ニールは俺の子供が欲しいらしい。この難題、おまえなら、どう解く? ただし、俺はニール以外を抱くつもりはない。」
 真面目に、質問したら、ティエリアは呆れたという顔で息を吐いた。そんなこと今更だろうということらしい。やれやれと、近くにティエリアも座り込む。午後の風は、穏やかな薫風を届けている。ここの気候は穏やかだ。雪も灼熱もない作物の生育も良い地域だ。ここでなら、人は争う必要もなく暮らしていける。肥沃な土地と魔法力のある人間の国は、他国から常に狙われている。それを護ってるのが刹那の魔法力だ。絶大な力を持っているくせに、些細なことで悩んでいるのがおかしい。だが、実際、難問には違いないと、ティエリアも真面目に考える。
「おまえが、ニールを王妃に指名した段階で、それは不可能な選択になった。子供など・・・・いや、子供の代わりなら・・・可能なのか。」
 ふむ、と、ティエリアは、唇に人差し指を曲げて軽く噛む。ティエリアの考えている時の仕草だ。その視線の先には、ハロに囲まれて、ぐっすりと眠っているニールがいる。
「たぶん、この人は、俺たちにしてくれたことを、おまえや俺がしてやれるものがあればいいと思っているんだろう。それが、幸せなことだと、この人は思っているんだ。なら、実際のおまえの子供でなくてもいいのではないか? 」
「養子か? 」
「いや、そこまで明確にしなくてもいいだろう。たとえば、ハロでもいいんだ。子供の代わりということなら人間でなくてもいいんじゃないか? 」
 自分の養い親は、世話好きな人だ。ディランディ家の先代夫婦も、そうだったから、そういう愛情というのが大切だと思っている。ティエリアだって、出会った時は、すでに十五になっていたのに、小さな子供のように世話して、いろいろなことを教えてくれた。それが幸せなものだとティエリアも教えられた。
「なるほど、そういうものがあればいいのか。」
「難題には違いないだろうな。この人とおまえの二人ともが、子供として認められるものでないとダメだ。」
「それ以前に、俺のことを子供としか見ないニールの目を変えないといけないという問題が残っている。」
「そうだったな。俺だって、この人にしたら、まだ子供という感覚だ。すでに、齢でいうなら、五十近く過ぎているというのにな。」
 ティエリアも刹那も、ニールが育てたようなものだから、そういう感覚が、ちっとも抜けない。そろそろ大人として見て欲しいとは思っている。というか、刹那とアレコレやっているんだから、そこいらは理解したら、どうなんだ? と、ティエリアでもツッコミたいところだ。
「ニールしかいらないんだ。」
「ニールは、そう思っているんだろうか? 」
「俺だけとは思っていないだろうな。」
「博愛主義者だからなあ。・・・どうして伝わらないのか、俺には不思議だ。おまえの態度も言葉も、俺たちが聞いても、そうとしか聞こえないのに、この人だけには聞こえないんだから。」
 それが、妙にニールらしいとティエリアは微笑む。別に、ニールは堅苦しい人間ではない。刹那とティエリアにも、実地教育と称して花街に連れて行ったこともあるし、当人も遊んでいた。ただ、本気になったのは見たことがない。その当時は、まだディランディ家当主だったから、花嫁は妖精の血が入っている人がいいんだが、とは言っていたが、本気で探していた節はない。まずは、刹那のことが済んでからでいい、とか、言っていたから、刹那の花嫁を探すほうに力を入れていたのだろう。それが、当人だと理解しないままだったのがおかしい。
「マリナに、散々嫌味を食らった。」
「マリナ・イスマイールか・・・ニールが大本命にしていたからな。組み合わせとしては良いものだとは思うが・・・おまえは、最初からニールだったからな。」
「当たり前だ。最初に、プロポーズしたのに、それだって臣下の礼で返された。王妃に指名したら、仮免許だと言われた。俺は王なんだから、たらされたりしないと説明しても理解しない。」
「そういうところは頑固だ。」
「まったくだ。」
 ふたりして、ぶつぶつと愚痴っていたら、ふあぁーと大きな欠伸をしてニールが目を開けた。ふたりの姿に目を留めると、にこっと微笑む。起き上がろうとしたが、お? と、ジタバタと暴れている。どうやら、腰に力が入らないらしい。
「刹那、腰がおかしい。治してくれないか? 」
「いや、今日は休んでいろ。」
「そうだ、ニール。あなたは疲れているんだ。ゆっくり休んだほうがいい。」
「そうも言ってられないだろ? 御前会議じゃなかったか? 」
 すでに、それは終って、太陽も高く上っているというのに、ニールは暢気に、そう言っている。
「それは終った。」
「げっっ、起こせよ、そういう時は。」
「腹はどうだ? そろそろ昼を回っているぞ? 」
「ええっ? 」
 うわー寝坊しすぎた、と、ニールが困った顔をした。御前会議というのは、王と王妃が並んで報告を受けるものと、昔から決まっている。仕事をサボったのは、まずいと慌てているが、起き上がろうとするのは、デュナメスが鼻先で押さえ込んだ。そして、ハロたちも、ハロハロと鳴きつつ、ニールの身体の上に居座る。いくつかのハロは一瞬消えて、どこからか果物を携えて再び、現れる。それをニールの口元に差し出している。
「いや、ハロ、待て。それはいいから。・・・ちょっ、刹那、これ、なんとかしてくれ。」
「イヤだ。」
「はい? 」
「あんたは疲れているんだから、今日は一日休養しろ。」
「バカなこと言うな。今日こそは、教授に挨拶してこないとまずいだろ? こっちに来てくれてから、俺、一度も顔を合わせてないんだぞ? 」
「それはカティがやってくれているから問題ない。」