鈴鳴の秘宝 第一章 予兆
Episode2. 失踪
「ただいまー！」
「おかえりなさい、キーア」
ティオとエリィが微笑みながら出迎える。キッチンにいたランディも出てくる。
「あれー？ロイドはー？」
きょろきょろとあたりを見回して言う。
「まだ寝てるみたいですね。二人で起こしに行ってきては？」
「私？」
「はい。ランディさんは夕食ですし、私は…」
「どうしたんだよ？何か気になる事でもあんのか？」
「…はい。データベースにあったものなんですけど…」
「ロイドもいた方がいいんじゃないかしら？」
「あ、そうですね。それともう少し調べてみたいので」
「了解よ。じゃあ行きましょ、キーアちゃん」
「うんー！」
花のように笑うキーアと共にエリィはロイドの部屋へと向かった。
コンコンとノックをする。だが返事は返ってこない。
「(まだ寝てるのかしら…？)ロイドー？入るわよ？」
ドアノブに手をかけ、開く。
「ロイドー！」
「あ、キーアちゃ…」
目の前の光景に、エリィは違和感を覚えた。
部屋は乱れてもいない。
いつものロイドの部屋だ。
だが、おかしい。
「あれー？ロイドがいないよ」
そう。部屋の主がいないのだ。
「キーアちゃん、下の二人に知らせてきて！」
「？…うん！」
危機迫った声と表情でキーアには十分だったようで、走って下に向かった。
「どういう事だ！？あいつ部屋で寝てたんだろ！？」
「私も何が何だか…でもいなかったのは事実なのよ！」
「まさか…」
ティオが暗い表情で呟く。
「心当たりあるの？ティオちゃん」
「…データベースにあった件と酷似してるんです」
「さっきの話って事か」
「突然人が消えて、あり得ない所で発見される…まさかとは思いますがそれが関係してるとしたら」
「…それって何件くらい発生してるの？」
「10件前後です。まだ少ないですし、行方不明者も発見されてはいるので調査もされていないみたいで」
「探しに行きましょう！見つかるとしても心配よ」
「だな。キー坊は課長に任せて…」
「ほぇー？」
そんな時、支援課の扉が叩かれた。
「特務支援課？」
クロスベルに着いたケビンとリースが挨拶をし終わり、シスター・マーブルにお茶を入れてもらって談笑をしていた。
「ええ。私の教え子がいるんですがとても有名なんですよ。グノーシス事件はご存知ですか？」
「はい。警察の方が解決へと導いたそうですが…まさかその方達が？」
「はい。それを知ったときはびっくりしました。私が解決したわけではないのに、とても鼻が高いんです」
照れくさそうにシスター・マーブルが言った。
「会ってみたいですね。その人達は今どこにいるんです？」
「クロスベルの…待ってください、今地図を書きます」
紙とペンを取り出し、手慣れたように地図を書いていく。
「ありがとうございます。早速行ってみます」
クロスベルに着く頃には、日は殆ど沈んでいた。
「ここが警察の分室ビルとは思えへんな」
「失礼だと思う」
「う…ま、まあ開くで」
そして扉は叩かれた。
「は、はい！」
なにやら少し慌てた様子で声がかけられ、扉が開かれた。
作品名：鈴鳴の秘宝 第一章 予兆 作家名：桜桃