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その声も、唇も

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「ここ、跡部部長の……、なんですね」
 チケットに書かれた企業の名前を見て、日吉はある種の納得をする。道理でジローが無料チケットを持っていたわけだ。恐らく、跡部本人からもらったのだろう。
「そうそう。これができたのは俺が中一にあがる頃でさ。理由がすごいんだよ? 跡部がイギリスから日本に住むことになったから、なんだって」
「……」
 一般人の感覚では分からない話に、日吉は眩暈がしそうになった。
 かなり巨大な複合レジャー施設だ。遊園地もあれば、当然のようにテニスコートもあり、さらにはプール、映画館、宿泊施設、レストラン、女性に嬉しいエステサロンまで揃っている。
 もらったパンフレットを眺めて、これが本来は跡部一人のために造られた施設なのかと思うと、改めて「すごい」という言葉しか出てこない。しかも、そういう人物とチームメイトであることは奇跡といってもよかった。
「なんだか笑っちまうよなー、跡部って」
 ジローの感想は的を射ていすぎて、かえって肯定しづらかった。
「まずはどうする? 遊園地でも行こっか?」
「……お任せします」
 面倒だからというよりは、特に希望がなかったから、という感じだ。ジローが好きそうなものは絶叫系アトラクションなので、そういったものなら日吉も大丈夫だった。
「そう? んじゃあ、遊園地へ行って、ジェットコースターに乗ろう!」
「はい」
 予想どおりのことを言ったジローに、日吉は軽く笑ってから、後に従いついていく。
 園内が近付いてくると、家族連れや学生たちの人の波がどんどんと増えていった。さすがは夏休みである。日吉は客観的にそれを知った感じだった。
 ──全国大会とテニスのことで、いかに頭の中がいっぱいだったのか。
 ふと、少し前を行く黄色い頭に視線をやる。
 ジローが誘ってくれた理由は、決して自分が楽しみたいからだけではないだろう。
 気を遣わせてしまったようだ。日吉は意識を切り替え、今日の休日をたっぷりと楽しむことにした。
「あんまり混んでないといいですね」
「そうだなぁ。けど、夏休みだから、ある程度は覚悟してあるよ」
 乗り気を見せた日吉の台詞に、ジローは嬉しそうに笑い、
「じゃ、急ごう」
 そう言って手首をつかむと、軽く引っ張るようにしながら走り出していた。

   *

「あー、楽しかった!」
 絶叫系アトラクションを三つほど制覇して、今はお昼の休憩タイム。
 跡部財閥は金に糸目をつけないので、遊園地のフードコートといえども綺麗で洒落た造りになっている。ジローが随所に感じる”らしさ”を堪能していると、ストローで飲み物をかき混ぜながら日吉が聞いてきた。
「これからどうします?」
「俺は、遊園地はもういっかなーって思うんだけど」
「そうですね。人も増えましたし」
 冷房の効いた快適な空間から、窓の外を眺めやる。園内は本当にたくさんの人であふれていた。アトラクションを楽しむための待ち時間が、軽く一時間を超えそうな勢いである。
「水着があればプールへ行くんだけどなー」
「最初に決めておくべきでしたね」
「うん。そこは失敗だった」
 もしかしなくても売っている可能性は高いが、わざわざ購入してまで入りたいかというとそうでもなかった。それに、跡部と違い二人ともお小遣いは限られている。
「テニスコートがあるけど、オフなのにテニスっていうのもな」
 ハハハ、とジローが笑うと、日吉も肯定する感じの笑顔を見せていた。テニス漬けの日々を自分で苦笑するようなニュアンスを浮かべ、肩を竦めている。
 その様子に、連れてきてよかったとジローは思った。
 きっかけ自体は跡部がくれたものだった。彼が昨日こっそりと耳打ちしてきた話とはこれのことで、突然の話にジローは目を丸くしたものである。
作品名:その声も、唇も 作家名:ハルコ