Shall we dance ?
さらにギルは言う。
「だが、おまえは無自覚で、あのバカに簡単にさわらせるし、だから、心配なんじゃねぇか」
ぶっきらぼうな口調。
相変わらず眼をそらしている。
決まり悪そうな表情だ。
まさか、とエリザは思う。
ローデリヒの屋敷で会ったときに、ギルがなにも言わずにエリザを見ていたのは。
もしかして。
まさか。
フランシスがエリザに対して口説くようなことをしたとたん騒ぎ出したのは。フランシスに失礼な態度を取ったのは。
そして、近づいてくる男を威嚇して退散させていたのは。
まさかまさか。
でも。
それで、つじつまは合う。
エリザは頬が火照るのを感じる。
きっと、今の自分の顔は赤い。
恥ずかしい。困った。
そのとき、音楽の演奏が始まった。
優雅なワルツ。
ああ、もう、どうしたらいいんだろう。
そう思いながら、エリザはギルとともに軽やかな曲に合わせて踊った。
作品名:Shall we dance ? 作家名:hujio