二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

永遠に失われしもの 第9章

INDEX|2ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

この世のものとは思えない美しさを持つ
 目の前の二人に暗黙の了解があったのか、
 漆黒の燕尾服に身を包んだ執事は軽く頷いて、ラウルに近づいてきた。


 「どうぞ、こちらへ」


 彼が近づくと共に、
 ほのかに良い香りが漂い始め、
 何の香りだろうと考えているラウルを、
 その執事は、上品かつ優雅な動作で促す。


 「わが主が、エット-レ枢機卿に謁見を
  願い出た理由は--」


 近くで見れば見るほど、
 艶のある漆黒の髪に、
 傷一つないその白い肌と、
 見事なまでに整った端正な面立ちは、

 そこに存在するのが
 まるで奇跡のような域で、
 セバスチャンが話しだしたのにも関わらず
 ラウルの心をしばし魅了していた。

 
 「ラウルさん?」


 呼ばれて、はっと我にかえったラウルは、
 同姓であるはずの執事を見て、
 心臓の鼓動を速める自分に
 心中で苦笑しつつ、メモに目を落とした。


 「ああっ・・・はい」

 「オレイニク公爵の後継者として、
  法王庁に認めていただくため」

 「と言いますと、先代は・・」

 「わが主の父君でいらっしゃいました。
  先日、急にお隠れになられましたので」

 
 ラウルはメモから目を上げ、
 セバスチャンを見つめる。


 「ローマ教皇の認可という後ろ盾
  が必要なほど後継者争いが深刻・・
  ・・・というわけですか?」

 「領地より遠く離れたこの地にいることが
  その回答になりますでしょう?」


 ( 母国にいては、
  あの少年の命も危ういのだろう )

 
  と考えたラウルだったが、
  先ほど会ったばかりの少年を思い描くと
  何か不自然なものを感じてならない。

  確かに、何かの翳を感じるが、
  命を狙われてからがらに逃げている
  少年にしては、何かが違うのだ。

  もっと不遜で大胆不敵な態度・・
  しかし、それは生まれの高貴さから
  持たされたものかもしれない、
  とラウルは思い直して、尋ねた。


 「公爵家の由来はどちらですか?」

 「ポーランドのシレジア地方、
  リーシェンから
  そう遠くはないところに、
  公爵の大公領があります」


  オレイニク家の相続についても
  調べてみたいところだが、
  その地方では政情不安もあって、
  調べがつくかどうか・・・と、
  ラウルは思案にくれている。

 
 「それにしても、枢機卿への謁見など
  毎日沢山あるはずですが?

  しかも凶悪犯罪課の貴方が
  こんな夜更けにまで--」

 
 セバスチャンは表情一つ変えずに尋ねた。