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永遠に失われしもの 第9章

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 「何度も言わせるな、その手を離せ!」


 どんな彫刻家でもその姿を再現したいと思うだろう、
 その美しすぎる少年のあまりの剣幕に、
 バスローブ姿であることもあいまって、
 自分の方が彼に乱暴を働いているような
 気になり、ラウルはその手を
 シエルの華奢な腕から離した。


 「失礼しました。
  貴方が彼の逮捕を邪魔するつもり
  なのではないかと思いましたので」


 シエルは、見下すように笑いながら
 年に似合わぬ高慢な口調で言った。

 
 「僕がそんなことをして
  何になるというんだ?」


 彼のどこからくるのかわからない
 自信に満ちた不遜な態度に、
 完全に圧倒されてラウルは咳払いをした。


 「と・・とにかく貴方の身はもうこれで
  安全なので、
  私たちは失礼させていただきます。

  それとは別件で、あなたに後で
  お伺いしたいことがありますので、
  また寄らせていただきます」


 「その時はいつでも・・・
  歓迎させていただこう。

  僕は逃げも隠れもしない」


 シエルは、残酷そうな微笑とともに
 冬の海のように凍てついた目で
 ラウルを正面から見据えて言った。


 何たる自尊心の高さか!
 とラウルは驚いた。

 自分の半身ほどしかないこの少年貴族は
 こんな状況だというのに、
 冷静な態度で皮肉を言ってくる!・・・


 ただ生まれが高貴だから身についた
 というもの以上の彼の自尊心を感じ、
 また単に虚勢を張っているのとは異質の、
 少年の中の余裕、
 さらに全身から染み出る凄絶な何か・・

 
 ・・一体どんな修羅場をくぐり抜ければ
 あの若さで、
 あのような迫力が生まれるというのか?

 
 部屋を退出し、廊下を歩きながら
 ラウルは目の前を抵抗もせず連行されて
 歩む長身で線の細い執事の、
 黒い燕尾服の後ろ姿を見つめた。

 背筋をのばし堂々歩く彼も、
 前にまわって、その手にかけられた
 手錠を見さえしなければ、
 連行されている者にはとても見えない。


 ただその耽美的な相貌は、
 背徳的なこの罪状を与えられても
 何も矛盾するところはなかった。