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鈴鳴の秘宝 第二章 歯車

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Episode.9 夕暮れ



「今日中に来ると思う?」
「ん?…ああ、来るやろ。明日から忙しくなるんやろうし、来る暇なんて今日くらいしかあらへんって」
「…あの時の魔獣、身体能力は上がってた。その代わり、なのか分からないけどあまり防御はなかった」
「…何が言いたい?」
「もし、それが今までの失踪者と同じだとしたら?」
「!?」
「一日ではありえない距離で発見された。アーティファクトによって身体能力が上昇してるとしたら…」

―――…りぃん

「!!」
「面白い…挑戦的なアーティファクトやなぁ」
「そうだね…まずは一つ、かな」
「ケビン神父、いらっしゃいますか?」
控えめにノックされた扉。それにケビンは軽く、おるよー、と返事をした。
「ロイドという方達がお見えになってます」
「来たか」
「今行きます」
シスターの足音が少しずつ遠ざかっていった。

「やっぱりティオちゃんがおったか」
「彼女、すごく警戒してるよね、私たちの事」
確かに。しかし彼女はとても聡明なはずだ。
昨日の手際といい、なにより彼女の本来所属している所にしても。
「エプスタイン財団、魔導杖開発テスト員…」
「こんにちは」
「あ、こんにちは。忙しいのに時間裂いてもらって申し訳ないです」
「いやいや。そっちほど忙しくはあらへんよ」
「そうですね。これから私たち、任務が控えてますし」
トゲのある言い方。リースが冷静に、それでいて少し苛立っているように言った。
「なら、貴女が来る必要性はなかったんじゃないですか?忙しいのでしたら」
「またいなくなってしまったらそれこそ任務に関わります。私達だけの問題じゃありませんし」
「ま、まぁまぁ…それで、聞きたい事は昨日の事なんやけど」
「は、はい」
「何があったとかは覚えてないんでしょうか」
「まったく覚えてないです…あ」
「なんか覚えてるんか?」
「何かに…鈴の音に呼ばれたような」
「!!」
「鈴の音…?」
「それと、もう一つ。全身が痛かったとかは?」
「起きた直後は痛かったです。今は何ともないですけど…」
「……」
「アーティファクトが関係しているんですか」
「……ティオ?」
「あなた達を信用しづらいのはケビンさんです」
「…俺?」
「はい。貴方は薄気味悪い。そしてその人を信頼しているリースさんも」
「…貴女の方が――」
「ま、待ってください!!」
「せやな。俺が薄気味悪いんは事実や。…自分でもまだ抜けきっとらんの分かる」
「……失礼します」
「あ、その、すみませんでした」
「いえ。貴方は何もしていません」
「…でも」
「……?」
「貴女が言おうとした事を察したから俺は遮ったんです。彼女を薄気味悪いと言わないで下さい。その言葉に、彼女は何度も傷つけられているんです」
「……誰でも傷つきます」
「はい。けれど彼女は口に出されなくても分かるんです」
「…?」
一礼してロイドは先に出ていったティオを追いかけた。
「リース。言いすぎや」
「で、でも…」
「彼女は優秀や。でもまだ子どもやし、それに…」
ふと止められた言葉を追求しようとする。
「それに?」
「あの時彼女が見た物が、あの年にしては異常な反応だったと思うてな」
ケビンの口調が酷く悲しく聞こえたので、それ以上彼女は聞こうとしなかった。

「ティオ!」
「すみません。私のせいで」
ひどく悲しいティオの声。ロイドはゆっくりと首を横に振る。
「ティオ、あの―…」
「戻りましょう?早く帰らないと間に合わなくなります」
何も言わせない。聞きたくない。遮った言葉がそう告げていた。

―――…りぃん

作品名:鈴鳴の秘宝 第二章 歯車 作家名:桜桃