鈴鳴の秘宝 第二章 歯車
Episode.10 鈴の音
なんとか夕方には帰ってこれて、それからエリィとランディに散々止められたがロイドは結局行く事にした。
「…迷惑かけないようにするから」
ロイドに寂しげな声で言われると、弱い。何かあったのだろうか。
それでも聞くべき事ではない。
「ねぇロイド君。大丈夫なの?」
「ああ、別に怪我したとか言う訳じゃないから」
「そっかーでも、何かあったらすぐに言ってよね!」
振り分けられた結果、住宅街にロイド、エステル、アガット、それからティオという結果になった。
「特に目立った混乱もなさそうですね、今のところは」
「あれ、ロイドさん」
大人しめな声が背後から聞こえて、ロイド達は振り返る。
「リーシャ、今帰る所か?」
「はい。いつもより練習に熱が入ってしまって」
「お疲れ様です」
「皆さん、お仕事ですか?皆さんこそお疲れ様です」
「り…リーシャ・マオ…?」
目を輝かせて、エステルが呟く。
「は、はい…」
「本物だー!!すごい!!ロイド君、リーシャと知り合いなの!?」
「あ、ああ…」
「いいなーリーシャと…」
アガットが握り拳でエステルを殴った。
「おい、今何してるのか言ってみろ」
「ち、治安警備…」
「ならそっちに集中しろ!!」
「はいぃい!!」
「まあ、そういう事なんだよ…」
「ごめんなさい、邪魔してしまって。それじゃあ」
「リーシャも気を付けてな」
軽くお辞儀をして、リーシャは再び前を向いて歩いて行った。
「そういえばティオちゃん、元気ないね?」
「あ、大丈夫です」
―――…りぃん
「!?」
「鈴の…音?」
「そんな音したか?」
「しましたよ…?」
「ティオ、頼む!」
「はい…!」
魔導杖を掲げ、周囲を探る。
「…まずいですね。各出口の近くに魔獣がいます」
「すぐに…」
―――…りぃん
「なに…!?」
「―――…っ」
小さな体がくず折れる。そしてそのまま倒れた。
「ティオ…!?」
「と、とりあえず他の皆に連絡しよ!ロイド君はティオちゃんを連れてすぐにビルに戻って!」
「じゃあ俺は先にここから近い出口に…」
「!?」
ティオがゆっくりと立ち上がる。アガットもエステルも、無論ロイドも目を見開いた。
「ティオ、大丈夫なのか!?」
「…えっ…?」
「うん、そう!各出入口!皆よろしくね!」
「大丈夫って、何がですか?」
確かにさっき意識が一瞬なくなったが、今自分は立っている。
別に何ともない。
「今、倒れたんだぞ…?」
「…?」
「なるほど、それがアーティファクトの手口かい」
「音で人を呼び、身体能力を上げてどこかへと連れていく」
暗がりから現れた神父とシスター。
頭のどこかで鈴の音が鳴り響いた。
作品名:鈴鳴の秘宝 第二章 歯車 作家名:桜桃