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背中ヘのキス

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「……で、なんて書いたかわかったか?」
「わかるか!」
 そう巣山が言ったのを合図に栄口は水谷を解放した。隣の犠牲者は、ぜえはあと荒く呼吸を繰り返す。
「じゃあもう一回……」
「オレがくすぐったいの弱いの知ってるだろ!」
「知ってるよ」
「知ってるなぁ〜」
「一組マジ鬼畜すぎ!」
 水谷はぎゃんぎゃんと喚き、こちらの非を責めてくる。笑いすぎたせいか目が涙で潤んでいたし、声色が少しかすれていた。けれど栄口はあまり大ごとに思っていなかったし、巣山もまたそうだった。いつも通りの水谷の反応だと、慣れきっていた。
「西広なんか漢字もわかるんだぜ」
「巣山だってすげーよ」
 本当か本当か、と巣山が担ぎ出される。どうも西広と対決させられるようだ。
 最初から居ればよかったなぁ。盛り上がる皆になんとなく気後れした栄口は残念な気分になる。こういうときガツガツと輪の中へ入っていく気概が無い。ましてや気の知れた仲間同士だ、嫌な顔をされるわけなんてないから、単に自分の性格の問題だった。
 そんなもやもやを断ち切るようにアンダーシャツを脱ぐと、顔を出してすぐに水谷がいた。おそらく機会をうかがっていたのだろう、早速質問が投げかけられる。
「なぁ、栄口は?」
「何? また背中触って欲しい?」
 立てた人差し指をくるくると動かすと、あからさまに水谷の顔色が変わって面白い。怯えた様子で嫌だと首を左右に振る。
「栄口は背中くすぐったくないんだ」
「巣山ほどじゃないけど」
「えー! なんで!」
「水谷が変なんだよ」
「へっ、へん……!」
 どもりながら水谷は復唱した。少なくとも栄口の周りで、こんなにも脇やら背中やらが弱い友人はいない。
「つかみんな着替えてんのに何で帰らないんだ」
「あー、みんな栄口待ちだったんだけど」
 つまりこの遊びが流行りだしたら、自分らがなぜ部室に残っているのかなんて、すっかり忘れてしまったんだな、と栄口は理解した。
 巣山と西広が隣り合って並び、二人の背中に文字が書かれるのをギャラリーがわいわいと見守っている。
「栄口にも書いてあげようかぁ?」
「オレ今裸なんですけど……」
「だから?」
「直はちょっとこそばゆいような」
「オレより平気なんだろ!」
 変と言われたことがよっぽど気に障ったのか、水谷が強引に押し切ってくる。
 この何も着ていない肌の上へ指で文字を書かれる。考えただけで背中がむずむずしてくる。水谷よりぎゃあぎゃあ騒がないとは思うけど、巣山ほど平然としていられないだろう。

作品名:背中ヘのキス 作家名:さはら