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みっふー♪
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novelistID. 21864
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かぐたん&ぱっつんのやみなべ★よろず帳

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×月×日(5)

銀ちゃんの昔のトモダチ(そーいや女装子癖以外にもトモダチいたんだったね!)が宇宙犬ドッグこんてすとに出す犬を、いっしゅんウチのじむしょで預かることになった。見たところ至ってふつーのつぶらな目をした茶色い雑種にしか思えなかったが、なんとこれいっぴきで最新モデルの宇宙船がン隻は買えるという驚きのおねだんらしい。
なまえは……なまえは、たしか、なんちゃらかんちゃらナンタラ5世、とかゆー舌噛みそーな長さだったので、さかもっちゃん(にあずかった犬)→もっちゃん→もっつぁれら→“チーズ”、
「アンっ!」
ためしに呼んでみたらちーず(仮)がうれしそうにへんじした。おねだんレベルは法外だが、あんがい気さくなヤツかもしれないアル。
「!」
おひるねしていたサダちゃんの耳がピンと立った。その存在を確かめるや否や、サダちゃんは血走ったケモノの目をしてちーず(仮)に突進してきた。
――やや、コレはちょっとマズイかもしんないアル、
と、私が止めに入るより早く、電光石火でちーず(仮)を救い出す勇者があった。
「やめろーーーっっ!! ちーず(仮)をそんな目で見るんじゃねぇっ!!!」
いつも半分しか開いていない目をさんかくに吊り上げて、天パおじちゃんは肩ではーはー息をしていた。
「……。」
ガチでおこられたサダちゃんはきゅううんとしっぽを垂れておひるねざぶとんに戻った。
「アンっ!」
天パおじさんの腕の中でちーず(仮)が元気よく吠えた。
「!」
おじちゃんは反対側の手に持っていた食いかけのメロンパンに気付くと、ちーず(仮)の死角になるように慌ててソレをぱっつんめがけてブン投げた。
「?」
ダラーッと心此処に在らずに気ィ抜いていたぱっつんの顔面にめろんぱんがヒットする直前、私は横から飛びついて華麗にイーティング&フライングキャッチをキメた。とにかく手元からメロンパンを避けられれば良かったらしい銀ちゃんは、私が無断でパムをもぐもぐやっても何も言わなかった。
「アンアンっ!」
ちーず(仮)は銀ちゃんに向かってさかんにしっぽを振った、――よくわかんないけどたすけてくれてアリガトウ、でもね、ちょっとただならぬ気配を感じはしたけどあのおっきいわんことなかよくしようとしただけだよ?
ちーず(仮)はハッハッと舌を出してもの言わぬ澄んだ瞳に銀ちゃんを見上げた。
「……。」
さいきんめっぽう涙腺が弱いらしい天パおじちゃんは、ちーず(仮)と視線を交わし合ったその場でダダ泣き号泣し始めた。
「?」
私とぱっつんは並んで首を傾げた。そんなに犬に思い入れがあるとも思えないのになんでだろう、ぱっつん師匠とアイコンタクトで相談し合った結果、
――とりあえずそっとしておこう、
天パおじちゃん、いまはさわっちゃアレな人だからね、私と師匠はじむしょを出てまだむの店に降り、濃いめに入れてもらったふつうの味のおれんじかるぺすでひと息ついた。
しばらくして、宇宙犬持ち込み許可証の更新手続きを済ませて戻ってきたさかもっちゃんにちーず(仮)を返すときも、またひと手間あった。もっちゃんからペットシッター代金を受け取っても、銀ちゃんはちーず(仮)をひしと抱えた腕を一向に離そうとしないのだった。
「そんなに気に入ったんなら、譲ってやってもええけんど……」
もっちゃんがパチパチそろばんをはじいた。まったくもって微塵の妥協も介在を許可されない、がっつり正規のおねだんだった。
「ンな金一生かかったって払えるかァァァ!!!」
腹の底から絶叫した自分があまりに惨めで不甲斐なかったからか、――トモダチ割引? なんぞソレ、な、あくまでクールにビジネスライクなもっちゃんの姿勢に怒りを覚えたのか、銀ちゃんはちーず(仮)を抱えたままじむしょを飛び出していこうとした。
「――そうはいかんきに、」
もっちゃんはニコニコ笑いながらふところから取り出したマジックハンドで銀ちゃんの足首をガッ!つかんだ。
「!!!」
――ビターーーン!!! 銀ちゃんは派手にぶっこけた。しかし顔面から床に落ちてもなおしっかと抱いたちーず(仮)を離そうとはしなかったのだった。
「……こりゃあ、根負けじゃぁの、」
鼻血ダラダラ流しつつちーず(仮)を抱き締めている銀ちゃんを見て、もっちゃんはおされアフロ一歩手前の頭をもしゃもしゃ掻いた。
「ほいたらこぉゆうのはどげじゃろ?」
――ギラーーン!! もっちゃんがグラサン●●メガネを輝かせ、人差し指を立てて身を乗り出した、
「……ちーず(仮)の本体所有及び血統書上の飼い主はワシじゃけんど、おんしには特別に、ちーず(仮)の親権保有主張権利パスを発行しちゃろう、」
「パス?」
もっちゃんが目の前にひらひらちらつかせたブツに銀ちゃんがやや食いついた。もっちゃんはすかさず畳みかけた。
「そうじゃ、これさえ肌身離さず持っとけば、“ちーず(仮)のオヤはこのワシじゃあ!”おまんが主張することを止めることは誰にもできん、コレはその根拠になってくれる力強い味方じゃ、……代金の方は……、そうじゃのう、こげなところでどがいかの?」
「……」
もっちゃんがはじき出したそろばんの額面を銀ちゃんはじっと見つめた。私とぱっつんも横から覗き込んだ。半年分の甘いモンをギリギリ切り詰めて減らせばどーにかなる範囲だった。
「乗った!」
銀ちゃんは珍しく潔い即決に、払い戻したペットシッター代になけなしの虎の子を追加して頭金にした。
「まいどおおきにぃ、」
もっちゃんはほくほく顔だった。こうして銀ちゃんはちーず(仮)の写真入り特別パスを手に入れた。
「……。」
私とぱっつんは再び顔を見合わせた。よくわからないが、すごくいらないものを、すごく納得ずくで買わされている光景にも思えた。
ともあれ、あれからまいにち銀ちゃんはヒモつけてぶら下げたちーず(仮)のパスを眺めてはニヤニヤへらへらしている。――ダマされた! 喚き立てる様子はいまのところ見られないから本人的には意義ある買い物だったのだろう。

パス代に当てるため糖分節約→イライラする→パス眺める→にへにへする、

……なるほど、半年分の砂糖代だと思えば実際たいした散財ではないのかもしれない、ものは考え様であると認識を改める私であった。


+++