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ところにより吹雪になるでしょう

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 引越しの荷解きをしているときかかってきた電話で阿部から水谷と同じ大学に通うことを聞いた。阿部と水谷は何だか知らないけれど三年間同じクラスで、大学も一緒となるとオレはこの腐れ縁をブチ切りたくなる、と愚痴っていた相手の声が本当にうんざりしていて栄口は思わず吹き出した。
「オレはてっきり先に水谷が泣きついてるもんだと」
「いや、学校終わってからあいつから連絡ないよ」
「はぁ? お前らあんなにベッタリだったのに」
「ベッタリって……」
「栄口が甘やかすから水谷が調子に乗るんだっつの」
 思い返してみると阿部の言うとおりクラスも違うのによくつるんでいたと思う。栄口には水谷に対する淡い気持ちがあったから一緒にいられるのがすごく嬉しかったが、水谷は一体どんな意図で自分を選んでくれていたのだろう。しかしそれを推測することはもう叶わない。前みたいに二人は高校生でもないし、お互いの距離も遠く開いてしまった。
 それからもたびたび阿部と連絡を取り合うことはあったが、水谷とは今に至るまで一度もなかった。しかしお互いの共通の友人ということもあってよく水谷のことが話題にあがった。阿部は、大学に入った水谷は前より本当にどうしようもない奴になったと嘆いていた。授業には来ないし、来ても遅刻だし、椅子に座るとすぐ寝るしと、根の真面目な阿部が許せないことを次々に挙げる。
「栄口からもなんか言ってやれよ」
「えっ、なんでオレなんだよ」
「お前といる頃の方が大分まともだったぞ」
 水谷がまともにしろまともじゃないにしろ、それに自分が関係しているとはと思わないのだけど、阿部にとっては栄口と一緒にいた頃の水谷の方がまだ気に障らないらしい。
「でもアレだよな、水谷って大学とかでもてるタイプじゃない?」
「……」
「ん? どした阿部?」
「ああ、こっちが嫌になるくらいもててるよ」
 これは結構派手に自爆した。自分で爆弾を置いたくせに逃げもしなかった。電話を切る前に阿部から「絶対水谷のことなんとかしろよ」と更に釘を刺されたが、栄口はそれをしなかったし、多分これからもするつもりはない。栄口の知っている甘ったれのふにゃふにゃ水谷ならまだしも、大学でモテモテの水谷に自分の助けなんていらないように思えてしまう。大体予想はしていた未来だったけど実際そうなってしまうとやっぱりショックが大きかった。
 水谷は今どうしているんだろう。阿部からなんとか二年生になったことは聞いているが、去年と同じくあまり真面目に授業を受けていないのかもしれない。水谷の周りはいつもにぎやかだから、離れ離れになったらきっと栄口のことなんて忘れてしまう気がしていた。
 あれからずっと連絡がないことからしても、もう水谷の中に自分はいないのだろう。だったら意地でもそばに居れる方法を取れればよかったのだけど、あれだけ勉強したのにもかかわらず、だだすべりで大学に落ちまくり、ここへ行くしかなかった。その時の栄口は消耗しきっていて、せっかくの合格を棒に振る勇気はなかった。
 そうでなくとも完璧な片思いで進路を決める博打は栄口にはとても打てなかったし、水谷に告白するなんていう博打をあの寒い日に打って失敗している。度胸が無いのは昔からで、人は慎重だとか周りが見えているとほめてくれるけど、一度として自分へプラスに働いたことなんて無い。