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ところにより吹雪になるでしょう

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 口の中に広がる血の味を消すためにさっきのペットボトルを飲んでみるが、やはりどう考えてもこれは変な味で傷に少ししみた。すぐ治るだろうけどしばらくは痛いなと栄口は顔をしかめた。でもそれだけで、心へ湧いてこなければいけない感情が全くなかった。怒りも悲しみもなく、あえて言えば申し訳ない。好きになってくれてごめんなさい、好きになれなくてごめんなさいと伝えたら彼女はもっと激昂するだろう。
 ここまで彼女を情緒不安定に変貌させたのもまた自分だ。彼女にとって既に栄口がどうでもいい存在になっていたら決してぶったりはしない。まだくすぶっているやりきれなさに火をつけたのが「どうも」だったのだ。あれだけ泣いて喚いて困らせた栄口に平然と礼を言われると、自分の存在が最初からなかったことにされたようで怒ってしまったのかもしれない。
 そこまで相手の気持ちが理解できるのに決して手を差し伸べはしない。自分がこんなにも心無い人間だとは思わなかった。決してこちらに好意が向くことのない、誰かを想う辛さなら栄口にも十分身に沁みてわかっていたのに、自分が想われる方の立場に変わったらとても無慈悲だった。
 講義のあまりの退屈さにあくびが出そうになる。サークルの先輩たちがどうしてあれほどこの教官の授業を取ることを薦めなかったのかうなずける。がんばって内容を聞き取ろうとするのだが午後の淀んだ空気のたち込める教室内では難しく、目を閉じるとあっという間に意識は落ちた。