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ところにより吹雪になるでしょう

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 水平線の向こうにぬらぬらと太陽が顔を出す。空の色調は不思議なほど夕方とそっくりで、水谷は昨日のコンビニ前を思い出す。違うところといったら朝焼けはどこか空気が静謐なことぐらいだった。
 まさか本当に海まで来るとは予想しなかった。若気の至りにしても三年間部活に打ち込んできた二人にとっては大胆すぎる行動だと思う。
 結局オレはどうしたいんだろう。栄口とどうなりたいんだろう。同じベッドで一晩過ごしても決断は出せなかった。仲良くしてもらえるけれど友達か、自分の欲望を全部ぶつけて絶交されるか、二つしか答えが見つからない。
 それならせめて知ってもらいたい。言うだけ言ってダメなら冗談にしてしまえばいい。それくらいの悪ふざけで壊れる仲じゃないし、もしかしたら栄口も自分のことを好きなのかもしれない。
(それはない)
 体温のすっかり移った砂を指が引っ掻き、手の内へできた塊は冷たい感じがする。あと残り少ない高校生活をただ栄口の隣でへらへら笑って消費するのかと考えると、何も行動を取らないことを後から絶対後悔するだろう。
 それに水谷は長い間辛かったのだ。当の栄口にも、他人にも言えないのに、気持ちだけは日に日に膨らみ、その下には黒い影ができる。叶わないとわかっていても諦めきれなかった『好き』を、栄口が誰かと付き合うことで木っ端微塵にぶち壊されるよりは、せめて自分から放ってしまいたい。
「栄口、あのさ」
「ん?」
「お、オレずっと……」
 なぜだろう、朝日が赤く照らす栄口の表情には露骨な怯えがあった。
 まだ好きとも伝えていないし、何かおかしな行動を取ったわけでもないのに栄口は瞳を大きく見開いて息を呑む。怯えは瞬時に水谷へも伝染し、半開きの口からひゅっと空気を吸い込んでそのまま閉じた。
 『好き』が大きくなりすぎて、馬鹿な水谷にとっては大事なものになってしまったのだ。告げなければ何も変わらないのにリスクを犯す勇気もない。冗談にされるのも勿体無い。
「始発の時間が気になって……」
 好機を自ら潰して、弱さを庇うことだけ上手になる。心配そうに「今日も塾だっけ?」と聞く栄口へ頷き、徹夜に厳しい朝日を睨む。細くすぼめた目にもぎらぎらと、太陽は昼の暑さを予感させる輝きを放ちながらゆっくり上昇していく。