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吐きだめに犬

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 そういうつまんない過去があったから、ついポロっと阿部に同情するような素振りをしたわけ。
「あー、わかる、女子って面倒だよね」
「なんだよ水谷、わかったような口ぶりで」
「彼女いるのか?」
「いたといえばいたんだけど……」
 部内の視線が一気に阿部からオレに移る。
「ち、中学のときね……」
 正直あの出来事を『つきあった』ことにカウントしていいのかどうかはわからないんだけど、女子の面倒臭さは身にしみている。そういう意味で言ったのに、皆興味があるのか、話題はすっかりオレの元彼女のことに変わってしまった。
「かわいいかった?」「多分……」
 嘘ですもう顔も覚えていません。
「胸でかかった?」「わかんない」
 そういう目で見てなかったから確かにわからない。
「どこまでいった?」「えー……」
 キスはおろか手も繋いでません。
「もったいぶるなよ」
「したんだろ?」
 好奇の目がオレに向けられ、そのまなざしには少し尊敬が混じっている。この期に及んでぶっちゃけ交換日記しかしてません! なんて言えないわけで、オレはつい見栄を張ってしまった。
「したよ」
 みんながどよめき、感嘆の声を上げた。
 その後の質問には持っている知識を一生懸命駆使してごまかして、話題が一区切りつく頃にはオレのあだ名が『エロレフト』になっていた。いつかのために蓄えておいた知識がこんなところでピンチを救うとは思ってなかったぜ! ありがとう先月号のアレと半年前のハウツーのアレ!
 でっかいハッタリをかましちゃったなって反省したけど、誰かに害を与えていないから別にいいだろ。突っ込まれたってまた嘘で切り抜ければいいんだし、「水谷はやったことがある」っていう認識をみんなが持っただけじゃん、何も悪いことなんてしていない。



 そんなふうにあぐらをかいて開き直ること一週間、因果応報は変な形で姿を現してきた。
「水谷さ、ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「なになに栄口? オレに相談なんて珍しくね?」
「……ここじゃ騒がしいから、帰り、一緒のとき」
 ぎゃっ何だその恥じらいは! なんだよなんだよ、誰かに聞かれたくないことをオレだけに相談したいわけ? いいですよ古典以外なら何でも聞いてくださいよ、栄口にだったら全部教えてあげちゃうよ。だって栄口はなんかいい。他の奴らとは別格で良すぎる。もっと仲良くなりたいなって思ってたとこだったんだよね。えへへ。
「あのさ……」
「何? 言いにくいこと?」
 二人きりの帰り道なのに尚も栄口は言い淀む。困った顔がかわいい。ん? かわいい? いや、だって栄口はかわいいよな、笑顔もいいけどこんな表情もたまらない。……あれ? オレっておかしい? や、ちょっと普通じゃないとはわかってるんだけど、かわいいっていうか、独り占めしたいっていうか、もっといろんな顔も見てみたいっていうか……あれれ?
「誰にも言わないで欲しいんだけど……」
 オレ、中学のとき同じクラスだった子とつきあうことになって
 でも初めてでよくわかんないから、水谷に色々話聞いてもらいたいんだけど……

作品名:吐きだめに犬 作家名:さはら