その唇で蝕んで
俺の中でシズちゃんは人間として数えられていない。
彼は人間じゃない。人間じゃないなら何だ。化け物だ。
俺は人間ではないシズちゃんが大っ嫌いだ。
…だけど、この時の俺はこんな変な状態の彼が気になって…なんだか放っておけなかった。
「……臨也」
「どうし、っ…!」
自分を呼んでやっと顔を上げた彼。それに応えようとした次の瞬間、俺は彼に見下ろされることになった。
突き飛ばされたと思ったらゴンッと頭に大きな衝撃を食らってその痛みに生理的な涙が滲んだ。
「っ、痛ぇよ! なにすんだこの馬鹿!!」
「……悪い」
「悪いと思うなら張っ倒すな!」
頭にガンガン響く痛みと目の前の男への怒りが表に露になって、治まらない。
未だ痛む後頭部押さえて自分を押し倒している男に憎しみを込めて睨みつける。
「臨、也」
その呼びかけに今度はなんだよ、と目だけで応えた。
するとまたまた意味がわからないことに胸倉を掴まれた。
「なん…」
これ以上の被害は御免だと抗議の声を上げようとしたが、それは叶わなかった。
胸倉を掴んだシズちゃんに顔を寄せられて気づけば俺は彼に口を塞がれていた。